『死霊館』(C) 2013 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

ハリウッドの大手映画会社が自信の大作を揃えた先頃の全米サマーシーズンで、『THE CONJURING』という聞き慣れない単語を冠したホラー映画がサプライズ・ヒットとなった。7月中旬にボックスオフィスで首位デビューを飾り、わずか3週間で大ヒットの目安の興収1億ドルを突破。いったい、どんなホラーなのか?

実在の超常現象研究家のウォーレン夫妻が、1971年に遭遇したオカルト事件を映画化。森と沼に囲まれた古めかしい屋敷を舞台に、そこに引っ越してきた一家を襲う奇怪な出来事の数々と、彼らを救うために現地を訪れたウォーレン夫妻の苦闘を映し出す。

“衝撃の実話”が売り物だが、物語は目新しくないし、ジェイソンや貞子のようにキャッチーな怪物キャラが暴れるわけではない。過去の1億ドル突破ホラー『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』のように、斬新な演出方式を採用しているわけでもない。むしろ古典的なタイプの心霊ホラーなのだ。

ところがこの映画、とてつもなく怖い。呪いの人形が登場する冒頭でテンションを高め、その後も絶え間なくハイレベルな恐怖シーンが連続する。何も起こっていない場面でさえも不気味な気配や物音が嫌な想像力をかき立て、屋敷内のタンスや地下室にカメラが近づいただけで背筋に寒気が走る。そして、ここぞという瞬間に炸裂するショック描写のおぞましさ!

ずばり本作が成功した要因は、ホラーの原点に立ち帰って“恐怖”を徹底追求したことにある。監督は『インシディアス』のジェームズ・ワン。彼が生み出す恐怖は日本人の感性にも合うだけに、『死霊館』なるオドロオドロしい邦題がついた大化けホラーが、この秋、日本でも猛威をふるいそうだ。

『死霊館』
上映中

『ぴあ Movie Special 2013 Autumn』(発売中)より
文:高橋諭治