新国立劇場バレエ『結婚』稽古場より。堀口純、小口邦明 新国立劇場バレエ『結婚』稽古場より。堀口純、小口邦明

新国立劇場バレエ団2013/2014シーズンの開幕は、20世紀初頭世界で最も有名なロシア人興行師と知られている、セルゲイ・ディアギレフによって結成されたバレエ・リュスの、ストラヴィンスキー傑作バレエ3作品を上演する。

新国立劇場バレエ「バレエ・リュス ストラヴィンスキー・イブニング」チケット情報

パリで革新的な成功を収めたバレエ・リュスの活動期間は短命ではあったが、音楽はストラヴィンスキー、ドビュッシー、踊り手と振付にニジンスキー、フォーキンといった、現在も鮮明にその芸術が伝承されている天才たちが集った比類なきカンパニーだった。ストラヴィンスキーの目まぐるしく変化する変拍子と格闘している、新国立劇場ダンサーたちの稽古場取材を行った。

ニジンスキーの妹、ブロニスラヴァ・ニジンスカが振付けた『結婚』は、世界でも上演するバレエ団は有数で、民族舞踊とモダンが融合した稀有な作品だ。ロシア農民の結婚の儀式が様式化されて演じられ、花嫁が少女から女性へと変化する道程が、長い髪を使って表現されている。花嫁役の本島美和が難しい役どころを終始不安げな表情演技で印象付けていた。作品は4台のピアノを使った演奏や全編に流れるロシア語の歌唱で綴られ、娘を嫁がせる両親の複雑な心境とはうらはらに、結婚を祝う人々の様子を迫力のある群舞が繰り広げていく。

『火の鳥』はストラヴィンスキー初のバレエ作品で、ロシアの童話を基にしている。魔王カスチェイの城に現れた火の鳥は、狩りを楽しむイワン王子に捕らえられ、逃がしてもらう代わりに羽を与えて飛び去る。イワンは城内に捕えられていた美しい王女ツァレヴナと恋に落ちるが、侵入者に気づいたカスチェイに捕まってしまう。羽を取り出すと火の鳥が現れ、魔物たちを眠らせる。その隙にイワンはカスチェイの卵を破壊すると魔王は滅び、ふたりの結婚式で大団円を迎える。稽古場では火の鳥に米沢唯。「カスチェイ一党の凶悪な踊り」は最大の見せ場で、舞台を真紅に染めて舞い踊る姿が楽しみだ。現実に結ばれる相手がいながら、火の鳥が放つ艶やかな妖気にも惹かれる、イワン王子に菅野英男。邪悪な魔王カスチェイのマイレン・トレウバエフは、身に宿った感性のすべてを発動させ、悪の力を振り撒いていた。また、バランシンの傑作『アポロ』は、ヒューストン・バレエからコナー・ウォルシュを迎えて上演される。

20世紀バレエ最高傑作と呼ばれ、時代を凌駕した3作品を、成長著しいダンサーたちが、どのように完成させてくれるのか、公演の幕開けを待つばかりだ。

公演は11月13日(水)から17日(日)東京・新国立劇場 オペラパレスにて。チケット発売中。

取材・文:高橋恭子(舞踊ジャーナリスト)