坂元健児、遠野あすか  撮影:源 賀津己 坂元健児、遠野あすか  撮影:源 賀津己

殺陣師としての顔を持つ俳優・清水順二を中心とした演劇ユニット・30-DELUXの結成10周年記念企画「デスティニー」が間もなく開幕。10月19日初日の東京・赤坂ACTシアター公演を皮切りに、全国ツアーを行う。「デスティニー」は東日本大震災の爪あとが生々しく残る2011年4~5月に初演され12000人を動員した代表作で、新たな演出家、キャストを迎えての再演となる。架空の国・ライカを舞台にしたこの壮大な活劇で、大将軍タムトックを演じる坂元健児、ライカの王女ユミンを演じる遠野あすかに話を聞いた。

30-DELUX『デスティニー』チケット情報

坂元は初演でも同役を演じ、遠野は初参加。坂元に初演の思い出を聞くと真っ先に「とにかく殺陣!」との答えが返ってきた。「できると勘違いされて誘っていただいたみたいなんですけど(笑)、それまで僕は本格的な殺陣の経験はなかったんですよ。だから前回は一からで、なかなかしんどかったです。単純に『(剣を)回して』と言われても、やり方がわからなくて。そういう意味では個人的には前回よりは楽ですけど、今回の殺陣もものすごいです!」(坂元)。スポーツバラエティ番組でも活躍する聖也ら身体能力の高い若手が新たに加わり、特色である本格派の殺陣はよりパワーアップ! 「よけなかったら当たるっていうリアルな殺陣なので、やりながら僕らもほんとにちょっと怖かったりするぐらい」(坂元)。

男たちが戦い続ける一方で、遠野は「皆さんに申し訳ないぐらいアクションがないんです。敵に追われているので、逃げる専門(笑)」。「エネルギーの強い男性たちの中にポツンと姫がいるという図なのですが、居方がわりと難しいんですよね。悲惨な状況なので暗くなってしまいがちだけど、ユミンの存在が薄くなってもいけないし……」と心配げな遠野に、「気にしなくても大丈夫!」とナイト(騎士)的立場の坂元が、王女然とした彼女の雰囲気に太鼓判を押す。

「賑やかなアクション場面が多い中、私と主人公テムジン(佐藤アツヒロ)との場面はじっくり観せる芝居パートという感じなので、ぐっと煮詰めていきたいですね。一国の姫の立場とはまた別の、恋する女性としての切なさや苦悩を上手く出していけたら」(遠野)。「今回の台本では、キャラクターそれぞれの人生がはっきりしてきた印象があります。だから殺陣はもちろんですけど、より深くなった人間ドラマを見てもらいたいですね」(坂元)。「メッセージ性が強いのですが、そういうものが説教臭くなくカッコよく心の中に入ってくる素敵な作品。バッサバッサの殺陣と同様の爽快感を(笑)ドラマにも感じていただけるはず」(遠野)

初演にはなかった歌もプラス。より強度と深度を増した熱いエンターテインメントに期待が高まる。

取材・文:武田吏都