(左から)レスト・チェン監督、リン・チーリン

「僕は死にません!」という流行語を生んだあのトレンディドラマが22年の時を経て中国を舞台に『101回目のプロポーズ ~SAY YES~』として映画化。ヒロインを演じたリン・チーリンとレスト・チェン監督が公開を前に来日を果たし作品に込めた思いを語った。

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お見合いに99回失敗したサエない男と美しいチェリストの不器用な恋模様を描く物語の大筋はオリジナル版と同じ。ドラマはアジア各国で放送されており、チーリンは「高校時代に夢中になって観た」という。「違う世界に住むふたりがどうなるのか? ワクワクドキドキしながら『頑張れ!』と応援してました(笑)」。

自らが熱狂した伝説的ドラマのリメイク作品でヒロインを務める。もちろんプレッシャはーはあった…が「信じられない…OK! やりたい!」と出演を即答した。「プレッシャーがあればあるほど『前に進まなくちゃ!』と燃えるタイプなんです(笑)」と自らを分析する。

チーリンよりも若いチェン監督がドラマを観たのは「10歳くらいの時に両親と」。そこからさらに数年後、再放送で観て武田鉄矢が演じた主人公に強く強く共感した。「指輪を投げ捨て、給料を馬券につぎこみ、道路に身を投げ出す――バカの極致ですね(笑)。そこまでやるほどの愛というのが鮮明に胸に残りました。だから今回の映画で主人公を演じたホアン・ボーにも『この3つは必ずやってもらう』と言いました」。

一方で、リメイクにあたって主人公だけでなくヒロインが決断し、努力する描写を取り入れた。さらに現代中国を反映させることも忘れなかった。「中国ではいま、経済発展と共に女性が物や条件で男性を判断しがちな傾向があると思います。そんな中で果たしてこの純愛は受け入れられるのか? そんな思いで作りましたが、興行の結果(興行収入30億円超/観客動員数660万人)がその答えを示していると信じたいですね」。

ちなみにこのインタビューでも記者会見でも、チーリンの隣には通訳が控えていたが、ほとんど必要ないほどに彼女は日本語を理解し、話すことができる。若い頃に日本に短期留学した経験はあるが、女優デビュー作『レッドクリフ』を携えて2008年に来日した当時はここまで流暢ではなかった。その後、日本のドラマ(「月の恋人~Moon Lovers~」)やCMに出演する中で語学力を磨いたということだろうか? 彼女が30歳を過ぎてから女優の道へと進み、一線で活躍し続けることができる理由が分かる気がする。

「彼女は男よりも男前なんです」と語る監督の言葉を「男ですから」と笑顔で受け止めながら、チーリンは続ける。「私を信じてくれる人、チャンスを与えてくれる人がいることが励みです。デビューは遅かったですが、自分でも知らない自分を見つけながらいま、仕事をしています」。

『101回目のプロポーズ ~SAY YES~』
10月19日(土)より公開

取材・文・写真:黒豆直樹