「Mac Fan」の小林正明編集長

11月に公開となる映画『スティーブ・ジョブズ』は、アップル・コンピュータ創業者にしてiPhone、iPad、iPodといった革新的な製品を世に送り出したカリスマ経営者の半生を描く物語だ。20年間にわたってアップルの最新情報を発信し続けてきた専門誌「Mac Fan」の小林正明編集長にジョブズという人物の功績は何だったのかを聞いた。

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「ジョブズがすごかったのは、iPhoneに何かの機能をつけたからというわけではないんです」。長くジョブズという人物と、その仕事を見続けてきた小林氏は、“ジョブズの何がすごかったのか”という問いにそう即答する。「ジョブズは“製品”を出すのではなく、彼にとっての“完成品”を出してきたのです。完成品とは、“これはダメだな”と感じてしまうことが極力ない域にまで作りこまれていること。ジョブズはそこに徹底的にこだわっていました。ではなぜそんなものを出せるのかというと、ジョブズやアップルがエンドユーザーの方向しか見ていないからなんです」。

中間業者や商慣習といった“大人の事情”からは妥協しか生まれない。エンドユーザーにとって何が一番良いのか? その一貫したユーザー重視の姿勢こそが、ジョブズの哲学であった。そうした考え方がどのようにして醸成されていったのか。若き日のジョブズの波瀾万丈な人生を、映画『スティーブ・ジョブズ』は克明に描き出している。映画を観た小林氏は「彼の半生をよく2時間にまとめたなと感心しました」と絶賛する。特に感心したのは、マイク・マークラを影の主役に据えたことと、アシュトン・カッチャーの名演だ。「俳優陣はそれぞれの役どころをよく勉強していました。アシュトン・カッチャーは若い頃のジョブズにそっくりで驚きました。気づいたら2時間が終わっていて、続きは!? って思うくらい。いっそテレビドラマが始まればいいのにって思いますよ(笑)」。

日本でも有数の“ジョブズフリーク”である「Mac Fan」編集長も太鼓判を押す映画『スティーブ・ジョブズ』。往年のアップルファンにとっても、新たな発見に満ちた一本になっている。

『スティーブ・ジョブズ』
11月1日(金)TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー

取材・文・写真:山田井ユウキ