『危険なプロット』師弟の共犯関係が生んだ結末とは?

2013.10.21 15:37配信
『危険なプロット』(C)2012 Mandarin Cinema - Mars Films - France 2 Cinema - Foz

少年は作家をめざす。物語に登場する主人公は、なぜかやたらと作家をめざす。現実にはサッカー選手になりたいとか公務員だとか、高校生くらいになると『桐島、部活やめるってよ』みたく「特になりたいものがない」と贅沢な悩みを抱えたりもする。ちなみにバイオリン職人をめざすイケメン中学生は、ジブリ国だけに棲息するマボロシである。

その他の写真

つまり「作家になりたい!」なんて輩は間違いなくマイノリティなのだ。映画にもやたらと作家志望が出てくるのは、大抵原作小説があって、原作者が自分のことを語っているから。作家は小説を書く。ペンキ職人はペンキを塗る。小説は映画化されるが、ペンキを塗った壁は映画化されない。シンプルな理屈だ。

で、フランソワ・オゾンの『危険なプロット』もまた、作家志望の少年と、彼の才能を見出した高校教師の交流を描いた、ある意味で大定番のストーリーといえる。

少年クロードの境遇はあまり明かされないが、秀才で美しく、幸せとはいえないバックグラウンドを背負っているらしい。そんな彼が、かつて作家志望だった教師の導きと“書くこと”を通じて自分を解放していく――なんてコギレイな美談ではまったくありません、この映画は!

クロードの小説めいた作文は、下世話な覗き趣味に満ちている。同級生の家庭を「いかにも中産階級」と上から目線で断じ、やがて自分自身も、『テオレマ』よろしく家族をかき乱そうと内側へと入り込んでいく。

いや、実はクロードは家族のぬくもりが欲しかっただけだと匂わす描写もある。むしろそっちが本筋と思うひともいるだろう。しかし作家はそんな生半可なイキモノではない。クロードは、唯一の読者である教師(実は教師の妻も夢中で読んでいるが)のニーズを探り、虚実を交えながらオモシロを追求していくのだ。

歪んだ創作を続ける師弟の共犯関係はやがて破滅へと向かう―というのがこれまた定番の転落劇だが、オゾンはそんな落とし穴をスルリと回避してみせた。少年と老人の前にオモシロの荒野が広がるラスト、彼ら以上に下世話なわれわれに「進め、進め!」とハッパをかける以外の選択肢があるだろうか。

『危険なプロット』
公開中

文:村山章

いま人気の動画

     

人気記事ランキング