新モデル「iPhone 5s/5c」からドコモも取扱いを開始し、主要3キャリアのスマートフォンのなかで、それぞれ最も販売台数の多い主力機種となったiPhone。家電量販店の実売データを集計した「BCNランキング」によると、新モデル「iPhone 5s/5c」に限ったキャリア別販売台数シェアは、9月20日の発売から1か月後の10月20日までの累計で、ソフトバンクモバイル40.0%、ドコモ33.9%、au26.1%。過去5年間の取扱い実績とノウハウをもつソフトバンクを、新参のドコモが追いかけるという構図になりつつある。

●「5s」「5c」とも、ソフトバンクがシェアトップを維持 「5c」は独走

モデルごとの内訳は、より高性能なカメラと指紋認証センサ「Touch ID」を搭載した高機能モデルの「iPhone 5s」が全体の77.7%、カラフルな5色のカラーバリエーションを揃えた「iPhone 5c」が22.3%。週ごとに販売台数を集計すると、「iPhone 5s」は、発売日を含む9月第3週(2013年9月16日~22日)をピークにやや減少傾向にあるが、「iPhone 5c」は、ほぼ一定の水準で売れ続けており、「5s」と「5c」の比率は、発売直後より縮まっている。

約8割弱を占める「iPhone 5s」に限ると、ソフトバンクモバイル38.6%、ドコモ36.5%、やや離れてauが24.9%と続く。残り約2割強を占める「iPhone 5c」では、ソフトバンクモバイル44.8%、au30.6%、ドコモ24.6%となり、「5s」より1位と2位の差が開く。1位のソフトバンクモバイルのシェアは4割を超え、ほぼ独走状態といっていい。「iPhone 5s」と「iPhone 5c」を合わせたトータルでは、発売3日後の9月22日までの累計、10日後の9月29日までの累計と変わらず、ソフトバンクモバイルがトップを維持。2位は、ドコモ、au、再びドコモと、入れ替わっている。

ドコモは、「iPhone 5s」に限ると、1位のソフトバンクモバイルに2.1ポイント差と追い上げているが、「iPhone 5c」では大きく水をあけられてしまい、トータルでは2位にとどまった。auは、他キャリアに比べ、「iPhone 5s」の販売台数が少なく、「iPhone 5s/5c」でのシェアは低迷している。3番手のポジションからはい上がることができるかどうかは、今後の巻き返しにかかっている。

●結局、どのキャリアがいいの? ネット上で飛び交ういろいろな声

インターネット上では、どのキャリアがいいのか、さまざまな意見が飛び交っている。主な論点は、LTEのサービスエリアの広さやつながりやすさ、速度などのネットワーク関連と、ポイントプログラムや有料オプションなどのサービス・サポート体制、そして端末代やキャッシュバック・割引を含めた費用だ。いま使っている携帯電話のキャリアに不満をもち、MNP(携帯電話番号ポータビリティ)の利用を前提に検討している人ほど、費用とネットワーク品質を重視しているようにみえる。乗りかえ先に、いまより高いクオリティを求めるからだろう。

「BCNランキング」のデータで、ソフトバンクモバイルが「iPhone 5s」「iPhone 5c」とも他キャリアを上回る販売台数を記録している要因として、MNPが対象の「バンバンのりかえ割」「のりかえ学割」、iPhone 4s以前のiPhoneユーザーなどが対象の「かいかえ割」などの各種キャンペーンと、「iPhone 5s/5c」の発売に合わせてLTEの2.1GHz帯と1.7GHz帯(イー・モバイル)を最大75Mbpsに高速化した「倍速ダブルLTE」や「つながるNo.1」といったキャッチコピーでアピールしている「ネットワークに対する評価」などが挙げられるだろう。MNP利用時の費用面の魅力を打ち出し、「iPhone 5s」と「iPhone 5c」の両方をしっかりと売る販売力は、さすがといった感じだ。

アップルが発表したタブレット端末の新製品「iPad Air」「iPad mini Retinaディスプレイモデル」との相乗効果で、iPhoneに対する注目度はますます高まりそうだ。今後、品薄が解消し、すでに使っているユーザーのネットワークに対する口コミが広まった後、シェアがどう変化するか注目したい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。