向田邦子による同名ドラマ原作をもとに、その3年後を描くふたり芝居『家族熱』。義母の朋子をミムラが、先妻との長男・杉男を溝端淳平が演じる。

ふたり芝居『家族熱』チケット情報

ドラマでの共演経験を振り返り、「その時の溝端さんはコミカルさがベースながら、自然と“善意”が伝わってくる役どころを演じられていました。それが若干今回の杉男さんと共通する気がして。あっ、面白そうと思いました」とミムラ。溝端は「いつも笑顔で、柔らかいイメージのミムラさんが、朋子が秘めている女性の“業”“色気”みたいなものをどう見せてくださるのか。今からすごく楽しみです」と期待を寄せる。

没後36年経った今も、衰えることがない向田作品の人気。熱烈な向田ファンのひとりでもあるミムラは、「向田さんのファンって今でも熱いですよね。『家族熱』というより“向田熱”みたいな(笑)。ただ個人的には、今まで見たことがない人がこれを機に、向田作品に興味をもってくれたらいいなと思っていて…」と、ファンならではの思いも明かす。

ミムラと同様に熱烈な向田ファンであるのが、上演台本・演出を手がける合津直枝。そんなふたりの熱量に溝端は、「若干圧倒されています…」と苦笑い。だがそれだけに「すごく勉強になります」と続け、本作の魅力について、「杉男と朋子ってお互い思いはすごく強いのに、どうしてもそれを言い出すことが出来ない。そこに美しさや切なさ、もどかしさを感じますし、またそれが文学的で素敵だなと思います」と分析する。

杉男が小学生の時、実母と入れ替わるように黒沼家に嫁いできた朋子。しかし杉男の父が前妻と通じていたことを知り、朋子は13年過ごした黒沼家を去ることに。本作ではその3年後、杉男の祖父の墓の前でふたりが再会するところから幕を開ける――。

「彼女が黒沼家に嫁ぐ前、お墓で再会した時、さらにその先を考えなければと考えています。ストーリーの柱がとても強い分、ちゃんと生きた人をつくらないといけないと思うので」とミムラ。溝端は、「家族になる、他人になるって実はとても複雑な問題を含んでいると思うんです。でも杉男はそれには気づかず、自分の思うがままに突き進んでしまう。その浅はかゆえの姿が、逆に残酷に見えたらいいなと思います」と抱負を述べた。

またミムラは「ストレートな恋愛譚にはしたくない」とも。ふたり芝居という濃密な劇空間でこそ生きる、向田作品ならではの恋愛劇がここに。

公演は5月29日(火)から6月5日(火)まで東京芸術劇場 シアターウエストにて上演。チケットは3月10日(土)から先着先行プリセールがスタートする。

取材・文:野上瑠美子