竹本駒之助 竹本駒之助

人間国宝の女流義太夫・竹本駒之助が11月1日(金)、KAAT 神奈川芸術劇場に初お目見得、大曲『和田合戦女舞鶴』を語る。公演を前に10月21日、駒之助が記者懇親会を開催した。

竹本駒之助 KAAT 初お目見得公演 『和田合戦女舞鶴』チケット情報

駒之助は昭和10年、兵庫県・淡路島生まれの78歳。平成11年に人間国宝に認定されている。女流義太夫になったきっかけは「大阪から女流義太夫の一行が淡路島にいらしたとき、みなさんをうちにお泊めした関係で、私が前座として興行に出させていただくことになりました。そのときに気に入ってくださった方たちの間で私を「内弟子」として連れて帰ろうという話がいつのまにかでき上がり、中学3年のとき、竹本春駒の内弟子として大阪に行くことになりました」。

その後、十代豊竹若大夫、四代竹本越路大夫という男性の師匠に師事。本格的にやっていこうと思ったのは「18歳の時です」と話す駒之助。「越路大夫師匠から、どう語るべきかを筋立てて説明いただいたおかげです。義太夫は、語りだけで何人もの人物を演じ分けるのですが、例えば女性でも廓の人と町人の奥さんでは言葉遣いや話し方が違いますね。越路大夫師匠は、位取りや職業によって、どう語りを変えるべきかという基本をご説明くださったんです。目から鱗が落ちる思いでした」。

文楽や歌舞伎でおなじみの義太夫節。女流ならではの苦労があったという「第一に生活のことですね。女流には、文楽や歌舞伎での定席がございませんから、義太夫だけでは食べていかれません。ここが問題なんです。女流義太夫の道を絶やしてはいけないのですが、さりとて生活のことを考えると、やりたいという方がみえても、みなさんにぜひこの道に入りなさい、ということができないのが難しいところです」。

今回駒之助が語るのは、近年あまり上演されることのなかった大曲『和田合戦女舞鶴』。源氏から北条氏へと権力が移行しようとする混沌の時代に、運命に翻弄されるひとりの女・板額(はんがく)を描く。「主人公の板額は男勝りの怪力の持ち主で、性根の据わった人物。「普通の女」として演じてはいけないと教わりました。その板額が忠義のために、我が子市若を、切腹するよううながす場面が聴きどころです。暗闇のなかで、市若が聴いているのを意識しながら、第三者に語りかけるようにひとり芝居をするわけです。文楽や歌舞伎には、忠義のために我が子を手にかけるお話がよくありますが、これは自分で手にかけるのではなく、子どもが自ら切腹するのをうながす、しかも面と向かってではなく、暗闇のなかであたかも誰かと話しているように語る、という場面です。市若はまだ11歳。板額は今なら30代後半といったところでしょうか。語り手を含めた7役をひとりで語らせていただきます」。

「義太夫は「音曲の司(つかさ)」と言われますが、本当にすばらしい芸術だと思います。そして義太夫は「情を語る」ものでもあります。ぜひいまの時代、義太夫をみなさんに聞いていただけることを願っています」

公演は11月1日(金)・2日(土)KAAT 神奈川芸術劇場 中スタジオにて。