『ショーシャンクの空に』稽古場より。成河、益岡徹 『ショーシャンクの空に』稽古場より。成河、益岡徹

あの『ショーシャンクの空に』が日本で初めて舞台化される。演出に河原雅彦、主演に数々の舞台で存在感を見せる成河(ソンハ)とTV、映画とジャンルを問わず活躍する名優・益岡徹のふたりを迎え、多くの人々に愛され続けてきた名作映画の舞台化に挑む。10月初旬から始まった立ち稽古の稽古場に潜入し、演劇ならではの本作の魅力に迫った。

舞台『ショーシャンクの空に』チケット情報

殺人の罪で投獄されるが無実を主張するアンディーと獄中で“調達屋”を務めるレッド。ふたりが友情をはぐくんでいく姿と共に、どんな過酷な状況でも希望を捨てることのないアンディーの戦いを描き出す。

9月の下旬から本読みが始まり、10月の初旬より立ち稽古がスタート。第1幕より丁寧に動きをつけていく。映画『桐島、部活やめるってよ』でも知られる喜安浩平による脚本、そして河原による演出には演劇ならではの描写が満載。小説、映画ではほとんど女性は登場しないが、今回の舞台ではアンディーが独房の壁に貼るポスターのピンナップガールとして実際の女優を起用し、刑務所で起こった出来事の“生き証人”として登場させるほか、俳優たちがひとりで2役、3役を演じなくてはならないという状況を巧みに利用するなど、演劇でしかできない効果的な表現がいくつも見られる。

何より河原が大切にしているのは登場人物の心理描写。まるで国語の授業のように、脚本を教科書に「ここは何でこう言ったんですかね?」「この“でも”の意味って何でしょう?」など、時に俳優たちに質問を投げかけ、話し合いながらシーンを作っていく。「何十年もの長い時間を描いた話であり、描かれないシーンとシーンの間を俳優が想像しないといけない。そこを埋めることができれば、小説とも映画とも違う、演劇ならではの非常にカタルシスの大きな作品になる」とは河原の弁。その言葉通り、じっくりと丁寧にひとつひとつの場面を作り、積み重ねて行く。

もちろん、稽古場でも中心にいるのはアンディー役の成河とレッド役の益岡。常に変わらず希望を失わないアンディーと己の罪を背負い続け、一歩を踏み出せないながらもアンディーとの出会いで変化していくレッド。求められる動きも“静”のアンディーと“動”のレッドでまるで異なり、年齢も親子ほど離れたふたりだが互いを信頼し、息の合った様子で物語の軸とも言える固い友情を築いていく。

休憩時間や他の人々のシーンなどの合間に、ふと気づくとセリフを合わせる成河と益岡の姿があった。難攻不落の名作に対し、彼らが舞台上でどんな“答え”を見せてくれるのか?楽しみに待ちたい。

公演は11月2日(土)より東京・サンシャイン劇場を皮切りに、大阪、福岡、名古屋、松本の各地で巡演。チケット発売中。なお、チケットぴあではWebとぴあ限定店舗にて当日券をハーフプライスで販売する。店舗販売の詳細は公式サイトに掲載。

取材・文:黒豆直樹