『42~世界を変えた男~』を手がけたブライアン・ヘルゲランド監督

史上初の黒人メジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンの実話を描いた感動作『42~世界を変えた男~』が間もなく公開になる前に、脚本と監督を手がけたブライアン・ヘルゲランドが来日し、インタビューに応じた。

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本作の主人公は、世界で始めて黒人メジャーリーガーになったジャッキー・ロビンソンと、球団のジェネラル・マネージャー、ブランチ・リッキーだ。リッキーは白人選手以外に開かれていなかったメジャーの門戸を開き、ロビンソン選手を迎え入れるが、観客やマスコミから非難を浴びる。映画は背番号“42”をつけて孤独な戦いに身を投じたロビンソンと彼を支えたリッキーの姿を描いている。

本作でヘルゲランド監督は最初から“定石”を外した映画作りを目指したという。「通常の映画であれば、主人公が挫折を経験して成長するのですが、この物語が興味深かったのは“ジャッキー・ロビンソン自身は最初から最後まで変わらない”ということです。むしろ、彼の存在によって周囲の人々が変化を遂げていきます。ですから、様々な視点を取り入れて多角的にドラマを作っていきました」。

そんな監督の想いが最も現れているのが、ロビンソンが“盗塁”をする場面だ。出塁した彼は巧みにリードをとり、マウンドの投手を翻弄する。牽制球によってアウトになる危険をおかして彼はリードを広げていく。サスペンス映画のような緊張感の中で、ロンビンソンと他の選手の立ち位置が変化していく名シーンだ。「ジャッキーは日ごろは『やり返すな』と言われていますが、出塁してしまえば存分に自分を表現することができた。記録映像を観ると出塁した彼はどんどんフェイクをかけていて、投手がどんどんナーバスになっていくんです(笑)。このシーンはセリフがなく、俳優の動きだけでドラマを描かなければならない。作り手としても面白いシーンでした」。

ロビンソン選手はとてつもない力と才能を備えていた。しかし、彼は黒人であるというだけで孤独な戦いに身を投じることになった。「彼の問題解決方法はパワーではなく、“自分自身を見せること”だったと思います。彼が初めてメジャーの試合に出た日は“ジャッキー・ロビンソン・デイ”と呼ばれていますが、私は最初の試合に出ることより、その後も毎日毎日、試合に出続けることの方が大変だったと思う。自分がどういう人間なのかを周囲に見せて、自らが手本となって周囲の人を変えていく。これが彼なりの問題解決の手段だったと思います」。

映画『42…』は、感動ドラマであるのと同時に“新しいタイプのヒーロー”の物語でもある。彼がやられても、やられても、決してやり返さずに私たちに見せる“姿”をスクリーンで見つめてほしい。

『42~世界を変えた男~』
11月1日(金)公開