イルジー・ビエロフラーヴェク(チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者) イルジー・ビエロフラーヴェク(チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 首席指揮者)

10月27日の京都公演を皮切りに来日ツアーを開催中のチェコ・フィルハーモニー管弦楽団が、同29日に都内で記者会見を実施。同楽団のダヴィド・マレチェック総裁と、20年ぶりに首席指揮者に復帰したイルジー・ビエロフラーヴェクが登壇した。

「チェコ・フィルハーモニー管弦楽団」来日ツアーの公演情報

1896年に創設されたチェコ・フィルハーモニー管弦楽団。そのデビュー公演はドヴォルザークが指揮し、マーラーも自身の交響曲第7番を自らの指揮で初演。20世紀以降は、ターリヒ、クーベリック、アンチェル、ノイマンといった母国の大指揮者たちに率いられ、欧州屈指の名門オーケストラとして名声を獲得してきた。だが、こと近年に限ると、決して社会的にも音楽的にも安定した時代を過ごしてきたとはいえない。

20年ぶりに再び首席指揮者に迎えられ、チェコ・フィルの“再生”を託されたビエロフラーヴェクは、かつて巨匠ノイマンの元で長年研鑽を積み、チェコ音楽の伝統を知り尽くした名匠だ。マレチェック総裁も「名門の復活を託すのはこの人しかいない」と全幅の信頼を寄せる。

復帰するにあたって「いくつかの条件を出した」というビエロフラーヴェク。「ひとつはチェコ・フィルの“魂”を変えていくこと。音楽面の向上のための熱意、努力を惜しまないことです。もうひとつは楽団員の給与を含めた社会的条件の改善。いずれも同意を得られて、復帰から1年を経た現時点には満足しています。ただ、芸術面においてはゴールというものはないので、今後も前進し続けねばなりません」と名門復権への意欲は十分だ。

チェコ・フィルの魅力といえば、ビロードのような弦の響きと、華やかな管楽器が絶妙に溶け合うサウンド。「楽団員の99%がチェコ人で占められ、チェコ音楽の伝統に基づいた教育を受けていること。本拠地のルドルフィヌム(ドヴォルザーク・ホール)の音響の素晴らしさ。そして、チェコで初めて創立されたオーケストラとして、チェコの作曲家の音楽を広めていく義務。チェコ作品の中には、すでに独特の個性があり、それを弾きこむことでチェコ・フィルの音色が育まれるのです」とビエロフラーヴェクは語る。

ビエロフラーヴェクとチェコ・フィルのプロジェクトは、早くも注目を集めており、現在、名門DECCAレーベルでドヴォルザークの交響曲全集録音プロジェクトが進行中。チェコ・フィルが母国の大作曲家の交響曲全曲を録音するのは、何とノイマン時代以来25年ぶり。すでに6曲のライブ録音が完了しており、リリースは2014年秋を予定している。

ビエロフラーヴェク復帰後の初の大規模な海外公演となる今回のチェコ・フィル来日ツアー。残る公演は、10月30日(水)・31日(木)の東京・サントリーホール公演のほか、11月2日(土)に宮崎・メディキット県民文化センター、3日(日・祝)のミューザ川崎シンフォニーホール、4日(月・祝)に愛知県芸術劇場の5公演。