シンポジウムに参加した『キャプテン・フィリップス』のモデル、リチャード・フィリップス氏

ソマリア沖で海賊の襲撃を受けて人質となった米国コンテナ船船長の奮闘を名優トム・ハンクス主演で描いた映画『キャプテン・フィリップス』。11月29日(金)に控える本作の日本公開に先駆け、モデルとなったリチャード・フィリップス船長本人が来日し、実際の体験談などを赤裸々に語った。

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今回フィリップス氏が招聘されたのは、「中東・アフリカ地域における安全管理と危機管理」と題されたシンポジウム。近年、中東やアフリカ諸国で邦人が事件に巻き込まれるケースが増えていることから、現地で活動する企業の安全管理担当者などに向けて訓練や啓蒙を行うイベントだ。英国の大手警備会社から招かれた人質解放交渉専門家によるセミナーや、山下公園内に停泊する客船マリーンルージュ船上での人質誘拐事件をシミュレートした訓練に続き、フィリップス氏が講演に登壇した。

フィリップス氏が船長を務めていたコンテナ船、マースク・アラバマ号が海賊に襲われたのは、2009年4月、アフリカ・ソマリア沖。フィリップス氏も「商船の仕事をしていれば、危険な海域であることは皆知っている」という、海賊被害が多発する場所だ。にも関わらず「出航から数日して、皆セキュリティ管理に慣れっこになっていた。訓練をもっと行っておくべきだった」と油断があったことも正直に告白するフィリップス氏。やがて武装した4人のソマリア人海賊に占拠されてしまったアラバマ号だが、フィリップス氏は乗組員を守ろうと孤軍奮闘し、結果、自ら人質となり、海賊らと共に救命艇に乗り込むことになる。

狭いボートの中で過ごした時間は最も過酷な時間だったそうで、「救命艇の中では水をなかなかもらえなかったり非常に苦しかった。米軍の交渉人が来てくれた時も、ボート内からはなかなか状況がわからなくて、事態がすぐに好転するとはとても思えなかった」と振り返るフィリップス氏。だが、そこで希望を捨てなかったことが、無事救出されるという結果につながった。「最後まで希望を持ち続けていれば、きっと抜け出せるチャンスは来るはず。その時に動けるだけの体力をなんとか温存しようと思っていたんだ」。

想像を絶するような過酷な体験だったにも関わらず、力強く確かな言葉で記憶を振り返ってくれたフィリップス氏。彼の孤独な戦いの一部始終がリアルに映像化された本作を、ぜひチェックしてほしい。

『キャプテン・フィリップス』
11月29日(金)全国公開