東日本大震災後、量販店は「節電」コーナーを開設(ビックカメラ有楽町店)

2011年のPC・デジタル家電市場は、インテルCPUのチップセット不具合問題に始まり、東日本大震災、タイの洪水被害と、大きなダメージに見舞われた一年だった。しかし、逆風のなかでも「節電」をキーワードに新たな需要が生まれ、またスマートフォンやタブレット端末の新製品ラッシュで活気づいた年でもあった。

●インテル問題解消後に震災……打撃の多かった2011年

今年2月1日、春商戦を前にしたPC業界が大きく揺れ動いた。インテルのCPU、Core iシリーズ第二世代版に不具合がみつかり、出荷が停止になったのだ。3月からの春商戦への影響が懸念されたが、2月から改良品の供給が始まり、2月下旬には、PCメーカー各社は該当製品の販売を再開。インテル問題は解決に向かった。

ところが、出遅れた春商戦を取り戻そうとしていた矢先の3月11日、東日本大震災が発生した。東北地方の工場、販売店、物流や交通などのインフラが大きなダメージを受け、3月の消費は大きく冷え込んだ。BCNランキングのPC・デジタル関連商品の平均単価と販売金額から算出する「BCN指数」をみると、3月の販売金額は前年同月比75.6%と大きく落ち込んでいる。

震災と原発事故に日本国中が震えるなか、売れたのは乾電池や懐中電灯、携帯電話の充電器、ノートPC用などの外付けワンセグチューナーだった。さらに、かつてない伸びを見せたのがUPS(無停電電源装置)。震災翌週の3月14~20日には、前年比614.9%を記録した。メーカーや販売店はこの消費の伸びに対応できず、店頭から商品が消えた。

そして今年、消費のキーワードになったのが「節電」。原発事故による電力供給不足で、東北・東京電力管内で計画停電が実施されたことで、節電への関心が一気に高まった。家庭の電球のLED化が加速したほか、扇風機の商戦が前倒しでスタートするなど、省エネ性能の高い製品が脚光を浴びた。

インテル問題や震災は不測の事態であったが、2011年は改正電波法によって、テレビ放送がアナログからデジタルに移行することが決められていた年。震災で被害が大きかった一部の地域を除き、予定通り7月24日に、地デジに移行した。家電量販店の好調を支えてきた薄型テレビ需要は、10年11月のエコポイント半減を目前にした駆け込み特需以降に一段落。今年3月は、震災の影響でエコポイント終了に伴う大きな特需はなかったものの、5月には前年同月比で台数・金額ともに再びプラスに転じ、7月まで、復興に向けて動き出した経済を下支えした。しかし、地デジ移行とともに一変。8月以降は台数ベースで4~7割減少している。メーカーは、インターネットコンテンツに対応した付加価値モデルの訴求に力を注ぐものの、ポスト地デジとともに、テレビは家電量販店の表舞台から去りつつある。

●auが「iPhone 4S」に参入 スマートフォン発売ラッシュ

一方、昨年末から始まったスマートフォンブームは、今年に入って本格化。新製品ラッシュで活気づいている。キャリア各社からAndroid OSモデルが続々と発売されたことに加え、10月発売の「iPhone 4S」を、従来のソフトバンクモバイルに加えてKDDI(au)が取り扱ったことで、スマートフォン人気は不動のものとなった。

さらに、国内・海外のPCや携帯電話メーカー各社が、Android OSやWindows 7搭載タブレット端末でiPadに対抗。夏から年末にかけて、ASUS「Eee Pad Transformer TF101」、日本エイサー「ICONIA TAB」シリーズ、レノボ・ジャパン「IdeaPad Tablet A1」、東芝「レグザ タブレット」などのAndroid搭載タブレットが登場した。NECは、PCの秋冬モデルとしてWindows 7搭載「LaVie Touch」を発売。「Sony Tablet」で参入したソニーは、Wi-Fi対応モデルに加え、NTTドコモから3G対応の小型折りたたみタイプ「Pシリーズ」を送り出した。そのほか、シャープがイー・モバイルから「GALAPAGOS(A01SH)」を、富士通がNTTドコモから「ARROWS Tab LTE」を発売するなど、大手メーカーがAndroid OSを中心にタブレットの発売に力を入れ始めた年でもある。

インテルのCPU問題から始まり、東日本大震災、地上デジタル放送移行、そして下期には、タイで発生した洪水の被害によって、HDD関連部材や日系企業の生産工場が被災するなど、大きなニュースが続いたこの一年。業界全体でみれば苦戦が続く状況は否めない。しかし、スマートフォン人気に続き、来年は、デジタル製品の新たな商材としてタブレット端末がけん引役になることに期待したい。各社が掲げる薄型テレビとの連携を具体的に消費者に伝えて、タブレットの活用シーンをわかりやすく訴求していくことがカギになる。「節電」というキーワードが消費を刺激したのは、節電や省エネという目的があったから。タブレット端末やインターネット対応の薄型テレビなど、新しい製品を使う目的を明確に伝えれば、消費は自然と促されるはずである。

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2011年12月19・26日付 vol.1412より転載したものです。

>> 週刊BCNとは