「写真を愉しむ」をコンセプトに掲げた新しいデジタル一眼レフカメラ「Df」

ニコンは、11月5日、東京で開催したプレスイベントで、「写真を愉しむ」をコンセプトに掲げた新しいデジタル一眼レフカメラ「Df」を発表した。10月下旬から、ニコンイメージングの各国サイトでティーザービデオ「Pure Photography」を流していた製品の全貌を世界同時に明らかにした。

撮像素子は、フラッグシップモデル「D4」と同じフルサイズのニコンFXフォーマット。機械式ダイヤルを随所に採用し、フィルムカメラに似た操作感を実現した。カラーはシルバーとブラックの2色。価格はオープンで、実勢価格はボディ単体で28万円前後、レンズつきの「Df 50mm F/1.8G Special Edition キット」が30万円前後の見込み。11月28日に発売する。

フィルム時代から30年以上にわたり、多くの一眼レフカメラの設計を手がけたニコン映像カンパニー後藤研究室の後藤哲朗室長が陣頭指揮をとって開発。フィルムカメラの名機と呼ばれた「F3」「FM」系の直線的な角ばったデザインを採用した。これまでの「D」シリーズとは異なるレトロ調の雰囲気をもつ。「D3」の発表以来、6年ぶりに製品発表会に登場した後藤室長は、「肩の力を抜いて、撮影を愉しんでもらえるカメラ」とコンセプトを語った。また、ニコンイメージングジャパンの五代厚司社長は、「長年、写真に向き合ってきたニコンならではの価値の提供をしていきたい」と語った。

シャッタースピードやISO感度をカメラ軍艦部の機械式ダイヤルで設定するフィルムカメラに似た操作性を実現。一方、フラッグシップにふさわしい画質を得るために、プロ向け最上位機「D4」と同じニコンFXフォーマット、35mmフルサイズの撮像素子を採用。画素数も1625万画素と、「D4」と同じものを搭載した。画像処理エンジンも「D4」と同じ「EXPEED 3」で、常用ISO感度は100~12800。ボディ単体の重量は710gで、FXフォーマットモデルとしては最小・最軽量を実現した。 サイズは、幅約143.5×高さ110×奥行き66.5mm、バッテリ・メモリーカードを含む重さは約765g。

●フルサイズで競合に後れを取るニコンの現状を変えられるか

実は、ニコンはこのところフルサイズモデルで競合のキヤノンに大きく後れを取っている。全国の主要カメラ・家電量販店の実売データを集計する「BCNランキング」で、フルサイズ撮像素子を搭載したレンズ交換式デジタルカメラに限ってメーカー別販売台数シェアを比較すると、ニコンの不振が目立つ。2012年まではキヤノンと拮抗していたが、今年4月以降。徐々に差が開き、この10月はニコンの30.2%に対し、キヤノンは66.3%というダブルスコアで差をつけられている状況だ。

さらに、ソニーがミラーレスでフルサイズの「α7」シリーズを発表するなど、競争環境も激化している。このなかで、新モデル「Df」はどこまでシェアの回復に寄与するのか。また、ニコンが掲げる「Pure Photography」というコンセプトが、どこまで市場に受け入れられるのかが注目だ。いずれにせよ、後藤室長が「新たな価値をぜひ感じてもらいたい。大人の写真生活を愉しんでもらいたい」とする狙いは、これまでにないユニークなもの。デジタルカメラ市場に一石を投じる製品になりそうだ。(BCN・道越一郎)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。