舞台『ショーシャンクの空に』 舞台写真:伊東和則 舞台『ショーシャンクの空に』 舞台写真:伊東和則

あの名作映画を舞台化した『ショーシャンクの空に』が11月2日、サンシャイン劇場(東京・池袋)にて開幕。若手実力派の成河(ソンハ)、ベテランの益岡徹に粟根まことらが集結し、多くの人に愛されてきた名作映画の舞台化に果敢に挑んでいる。

舞台『ショーシャンクの空に』チケット情報

無実を訴えながらも殺人の罪でショーシャンク刑務所に投獄されることになったアンディー(成河)。過酷な状況になっても常に希望を失わず、自由を求める彼の戦い、老囚人のレッド(益岡)と友情を育んでいくさまを描き出す。

あの傑作映画をどうやって演劇として成立させるのか? 期待とそして不安を持って多くの観客は劇場に足を運んだだろうが、完成した作品を見て、演劇でしかできない様々な表現に息を飲み、いつしか映画との比較など頭の片隅に追いやり、物語に引き込まれていったのではないだろうか。

刑期を終えて仮釈放されたレッドが懐かしむようにショーシャンクでの日々を回想し、手記としてまとめていく形で物語は展開。アンディーが投獄された1940年代から10年、20年、30年と決して短くはない時間の流れがしっかりと、時折、レッドが生きる70年代を交錯させながら描かれる。

重厚な作りの2階建ての刑務所のセットに巧みに照明を当てることで、独房、バーに法廷など様々なシチュエーションを創出。映画『桐島、部活やめるってよ』がセンセーションを起こした喜安浩平による脚本と河原雅彦の演出が見事なマッチを見せている。

演劇ならではの表現と言えば、物語で重要な意味を持つアンディーの独房の壁に張られる女優のポスター。この“小道具”を本作では擬人化し、高橋由美子ら女優3人がそれぞれリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクウェル・ウェルチという実在の名女優に扮して登場する。アンディーが約30年におよぶ刑務所暮らしで何をしてきたのか? 彼女たちはそれを壁から覗き見ていた証言者であり、セクシーかつコミカルな狂言回しの務めを担っている。

何より、特筆すべきはアンディーとレッドの存在感。苛烈な状況でも希望を失わず、常に変わらぬ不思議なオーラを持ったアンディー。彼に触発され徐々に変わっていくレッド。特に本作では映画以上にレッドの揺れる心情――己の罪と向き合い、アンディーの言葉を噛みしめながら、勇気を持って一歩を踏み出していくさまが描かれており、益岡の好演が光る。希望に満ち溢れたラストは圧巻である。

客席には映画版のファンと思しき中高年の観客の姿が目立ったが、終演後には立ち上がって拍手を送る姿も。鳴り止まぬ拍手の中、成河と益岡は手応えを確かめるように握手を交わしていた。

東京公演は11月10日(日)まで。その後大阪、福岡、名古屋、松本を巡演。チケット発売中。なおチケットぴあWebでは公演前日よりハーフプライスチケットを販売。

取材・文:黒豆直樹

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