より薄く、軽くなったiPad Air

約1年ぶりにモデルチェンジした「iPad」と「iPad mini」。オリジナルの9.7インチ「iPad」は、より薄く、より軽い「iPad Air」に進化し、7.9インチの「iPad mini」には、高精細ディスプレイを搭載した「iPad mini Retinaディスプレイモデル」が加わる。画面サイズと解像度以外、スペック面の差はなく、名称こそ違うものの、サイズ違いのバリエーションとみていいだろう。

iPadは、主に自宅やオフィスなどの室内で使うWi-Fiモデルと、通信機能を備え、スマートフォンと同じように使えるWi-Fi + Cellularモデルの2タイプに分かれる。最近は、Wi-Fiモデルが主流だが、本体の大幅な軽量化(iPad Air)や、LTEのサービスエリア拡大・高速化によって、外出先でより快適に利用できるようになったことでCellularモデルに目を向ける人が増えそうだ。さらに、スマートフォンとセットで利用すれば、最大2年間、タブレット側のパケット定額料が月額1050円になる新たな料金プランが登場し、このプランを選べば、ネックだった料金面の負担も減る。小型の「iPad mini」を含め、今までよりCellularモデルの人気が高まっていく可能性を感じる。

そこで今年は、「iPad」のCellularモデルに注目していきたい。まずは、11月1日発売の「iPad Air」について、家電量販店の実売データ「BCNランキング」をもとに、「iPhone 5s/5c」と同様、発売後3日目までのキャリア別販売台数シェアを集計した。なお、Wi-Fiモデルを含む「iPad Air」全体の売れ行きに関しては、「iPad mini Retinaディスプレイモデル」の発売後、両者を比較するかたちで改めて取り上げる。

●「iPad Air」のCellularモデルはソフトバンクが6割以上を占める

「iPad Air」と「iPad mini Retinaディスプレイモデル」のWi-Fi + Cellularモデルは、ソフトバンクモバイルとKDDI(au)が販売する。同じiOSを搭載したアップル製スマートフォン「iPhone 5s/5c」とは異なり、ドコモは取り扱わない。2010年発売の初代から第3世代iPadまでは、国内ではソフトバンクモバイルの独占販売だったが、12年11月発売の「第4世代iPad/iPad mini」以降、2キャリアが取り扱っている。

「BCNランキング」によると、Wi-Fiモデルを含めた発売後3日間(2013年11月1~3日)の「iPad Air」の販売台数は、前機種「第4世代iPad」の発売後3日間の2.9倍。Cellularモデルに限っても、「第4世代iPad」の1.9倍に達した。「Nexus 7」や「iPad mini」の登場以来、売れ筋が7インチにシフトしている点を差し引くと、まずまずの滑り出しといっていいだろう。

「iPad Air」全体の14.3%を占めたCellularモデルのキャリア別販売台数シェアは、ソフトバンクモバイルが61.9%、auが38.1%。およそ6対4の比率で、ソフトバンクモバイルのほうが多く売れていた「第4世代iPad」と傾向は変わらなかった。これまで培ってきたイメージやネットワークの品質、スマートフォンとのセット料金プランなどが評価されたのだろう。容量・カラーによっては、iPhone同様、在庫切れ・入荷待ちとなっていたようだ。また、LTEに対応していない「第3世代iPad」以前の「iPad」のCellularモデルから「iPad Air」のCellularモデルに買いかえる場合、3GからLTEへの切り替えとなるので通信速度や処理スピードは格段に速くなり、メリットは大きい。

●iPhoneとのセット利用で最大2年間、月額1050円で利用できる新プランに注目!

auは、スマートフォンとタブレットを合わせて月間9GBのデータ容量を分け合うことができる「データシェア」サービスを2014年6月に開始する予定。タブレット側の通信料金は最大2年間、月額1050円になる。これに先立って開始した「先取り!データシェアキャンペーン」に申し込むと、「データシェア」開始まで、スマートフォンとタブレットそれぞれで7GBまで利用できる。ソフトバンクモバイルも、同様に最大2年間、パケット定額料月額1050円で「iPad」を利用できる「タブレットセット割」を開始した。14年5月までは、auと同じく、「iPad」単体で月7GBまで利用できる。スマートフォン、タブレットともにそれぞれ上限7GBまでの定額プランに加入する従来のスマートフォンとのセット割引より、端末代を含めた2年間のトータル費用は安くすむ。

経済的理由から「iPad」のWi-Fi + Cellularモデルを諦め、Wi-Fiモデルを選んだ人や、「iPhone」だけにとどめていた人が、新たに加わったこの割引プランを「安い」「おトク」と評価すれば、今後、Cellularモデルは伸びていくはず。反対に、この料金設定でも「高い」と判断する人が多ければ、主流はこれまで同様Wi-Fiモデルのままだろう。「iPhone」の売れ行きにも少なからず影響を及ぼすかもしれない。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。