デジタル時代の精密機械で撮影を「愉しむ」、ニコン「Df」に触ってきた!

2013.11.7 19:24配信
35mmフルサイズCMOSセンサ搭載のデジタル一眼レフカメラながら、男性はもちろん、女性が手にしても違和感がない

ニコンから、特別なメッセージを込めた35mmフルサイズのデジタル一眼レフカメラ「Df」が発表になった。マスコミ向け新製品発表会の速報は既報のとおりだが、本稿ではその補足と、実際に実機に触れて感じたファーストインプレッションをお届けしよう。

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●カメラのあり方を改めて問い直す試み

製品名「Df」の「f」は、「fusion(融合)」を表している。「手応えのある直感的な操作性」と「フラッグシップの画質と機能」の融合を意図しているという。コンセプトを説明したニコンフェロー 映像カンパニー 後藤研究室の後藤哲郎室長は、「Df」の開発に着手した2009年当時を振り返りながら、「かつてカメラは精密機械だった。デジタル全盛のいま、カメラは電子機器になっている感がある。精密機械としてのカメラのあり方を問い直してみてもいい時期に来ているのではないかと考えた」と語った。

どうやら「Df」は、単なる懐古趣味やフィルムカメラへの憧憬だけでつくられたわけではなさそうだ。ニコンにしては珍しくティーザー広告を展開して、発表会もさながらフラッグシップ機発表の場のような陣容で開催するなど、実は並々ならぬ期待を寄せていることをうかがわせた。

●手にして驚く軽さとメカニカルな操作感

発表会後のハンズオンで実機を手にとって、まず驚いたのはその軽さだ。キットレンズの「AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G (Special Edition)」を装着した「Df」は、フルサイズ一眼レフとは思えないくらい軽い。ボディ単体の重さは約710gと「D610」より50g軽いだけだが、形状や手のひらの中での感触と相まって、数値以上に軽く感じられる。グリップ部分は他のニコン一眼レフに比べると厚みもなくシンプルな造形だが、意外と指がかりがよく、握りやすい。見た目以上にしっかりホールドできる。

ボディ前面向かって左上、「Df」のロゴの隣にあるサブコマンドダイヤルも、見た目以上に操作性はいい。垂直の向きに置かれたダイヤルは一見回しづらそうだが、カメラを構えてファインダーをのぞいた状態で、右手人差し指か中指で簡単に操作できる。デザイン重視でこうしたダイヤルになっているわけではなく、グリップ部分の形状との関係で、ダイヤルの向き・位置・大きさがしっかり考えられている。

ボディ上面のダイヤル類は「Df」の操作性の要で、「融合」の一方を象徴する要素でもある。ローレット(滑り止め)の刻まれた金属削り出しのシャッタースピードダイヤルやISO感度ダイヤルを回す感触は、往年のフィルム一眼レフカメラを彷彿とさせる。カメラ内部の信号伝達は電気的に行われているはずなのに、ギアやバネが複雑に絡み合うような機械的な感触すら感じさせるものだ。防塵防滴が施されたボディだと、ダイヤルがゴムパッキンの上のスイッチのように感じられるカメラもあるが、「Df」のシャッタースピードダイヤルとISO感度ダイヤルには、気持ちのよい手応えがある。

●電源をオンする前に露出を考えられるカメラ

こうしたダイヤルを搭載する最大の利点は、設定状態が常に確認できて、いつでも変更できることだろう。デジタルカメラは、電源をオンにしないと各種設定の確認・変更ができない。しかし「Df」なら、電源オフの状態でもシャッタースピード、ISO感度、露出補正値の確認・変更ができる。装着するレンズによっては(Dタイプやマニュアルレンズなら)、絞り値も常に確認・変更できる。

それは、「目の前の光景を自分のイメージする写真に撮るためには、どのシャッタースピードや絞り値を選べばよいか」を、まず考えることつながるのではないだろうか。液晶画面や表示パネルを見る前に、ファインダーをのぞくよりも先に、頭の中で露出を決めてシャッターを切ってみる。「写真に没頭して撮ることを愉しめるカメラ」としての「Df」の存在意義が、そこにあるように思う。

●ファインダーへのこだわり方はあと一歩か

往年のマニュアルフォーカス ニッコールレンズが使えることも、「Df」の魅力。不変のFマウントを続けたきたニコンだからこそできることだが、デジタルになってからは初期の非Aiレンズは装着できなくなった。「Df」では、マウント外周に用意された露出計連動レバーを、フィルム一眼レフカメラのF3やF4と同じように可倒式にして、非Aiレンズも装着できるようにしている。ただし、絞りの設定には、ボディへのレンズ情報の登録(あらかじめ9種類まで登録できる)→レンズの絞り値をダイヤルでボディに入力→非Aiレンズ使用をメニュー画面で選択、と、やや手間がかかる。

マニュアルフォーカスなので、当然ファインダーの見え具合が気になるところだが、新製品発表会での質疑応答のなかで、ニコンは「マニュアルフォーカスのために特別なファインダーを装備したわけではない」と明言した。つまり、ファインダーは「D610」などと同等のもののようだ。ニコンのファインダーは、デジタル一眼レフカメラのなかではピントの山がつかみやすいほうだが、オールドレンズでの撮影の愉しみを提供するのであれば、もう一歩踏み込んでこだわってほしかった。例えば、いまだに根強い人気があるエレクトロクロミック素子を採用した「F5」のファインダーのように。

●デジタル機能を損なわずに操作性を変える野心作

ネット上では、「Df」に対して、「ボディ単体で27万8000円はあまりに高い」という意見が多いようだ。「AFも液晶画面もいらない。フィルム一眼レフカメラのフィルムを撮像素子に置き換えただけのデジタル一眼レフカメラを期待していた」という声も散見される。

しかし、フラッグシップ「D4」の撮像素子と画像処理エンジンを搭載して、このカメラだけのアナログな操作部を開発・搭載するとなると、この価格は決して高すぎるわけではないだろう。もちろん、収益を度外視して戦略的に思い切った挑戦に賭けて、初値22万円前後からのスタートだったら、世のカメラファンも他メーカーも度肝を抜かれたに違いない。

デジタルならではの多機能を削ぎ落としたフィルム時代そのままのカメラの復活を望む声もわかるが、「Df」の立ち位置はそれとは違うはず。ダイヤルは、デザインとしてレトロ調を演出するためにあるのではない。デジタルの機能を存分に生かしながらも、複雑になっていくカメラのコントロールをもっとシンプルで直感的なものにしようとするアプローチの一つが「Df」なのだと思う。

光を読み、露出を決め、シャッターを切る。写真を撮る作法とはどうあるべきかを問いかけてくる「Df」は、ある意味、一眼レフカメラがこの先どう進むのかを模索するニコンの野心作といえるのかもしれない。ここから先の評価は、あなた自身が実際に「Df」をじっくり触って判断してほしい。(フリーライター・中村光宏)

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