シルヴィ・ギエム記者会見の模様 photo Nobuhiko-Hikiji シルヴィ・ギエム記者会見の模様 photo Nobuhiko-Hikiji

バレエ界の女王、シルヴィ・ギエムが、間もなく開幕する舞台のために来日、11月7日に開催された合同インタビューで、今回日本で主演するふたつの作品について語った。

ギエムが踊る2作品のうち、『カルメン』は東京バレエ団との共演。現代バレエ界の巨匠振付家、マッツ・エックの作品を日本のバレエ団が上演するのはこれが初めてのことだという。エック作品を高く評価し、踊ってきたギエムだが、「エックの描くカルメンこそ、メリメの原作に描かれた“本当の”カルメン。私は一般的な、きらびやかな姿に描かれるカルメンより、このカルメンのほうが好きです」と、自ら演じるヒロイン像と、エック作品の素晴らしさについて話した。

一方の『聖なる怪物たち』は、2006年の初演以来、世界各地で上演を重ねている話題作。日本でも2009年に上演、ダンス界の寵児として知られる振付家、アクラム・カーンとのコラボレーションが大いに注目された。「これは、私がアクラムと一緒に仕事をしたいと思い、一緒に創っていった作品。振付作品というより、もっと個人的なもの、人生の断片と言えるようなものになりました」と、作品への深い思いを語る。また「この作品では、風貌も、文化的にも異なるふたりが出会い、お互いに共通点を見つけていく。ふたりとも、片方の脚は伝統的なところに立ち、もう片方は新しい発見をしたいという思いを持っているのです。断続的に上演していますが、そのたびに大きな喜びがある。私たち自身と一緒に生き続けている作品だと思っています」と作品を評した。舞台上でふたりは、子ども時代の稽古のこと、踊りについて語り合う。その言葉が、じわじわと、観客の心にしみこんでいく。上演する国によって観客の反応に違いはあるかとの質問には、「ウィ!」と即答。「ヨーロッパでユーモアと考えられているものが日本では感動を呼んだり、その逆もあったり。でも、言葉がわからなくても、最後には、皆さん、子ども時代に戻っていくような、目を大きく見開き、世界を食べてしまいそうなエネルギーに包まれていくような気がします」と、確信に満ちた表情で応えていた。

『カルメン』は11月14日(木)から11月17日(日)まで東京・東京文化会館 大ホール、『聖なる怪物たち』は11月28日(木)から12月1日(日)まで東京・ゆうぽうとホールにて開催される。両公演ともチケットは発売中。取材・文:加藤智子