三谷幸喜監督が『清須会議』でこだわったこと

2013.11.12 15:00配信
三谷幸喜監督

三谷幸喜監督にとって初の時代劇となる『清須会議』、この男が作るだけあって、ただの時代劇ではない。歴史という衣をまといつつ、これぞ三谷作品の真骨頂とも言うべきエンターテインメントに仕上がった。

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「本能寺の変」で織田信長が死んだのちの後継者などを決めた5日間の会議を描く本作。史実が題材ではあるが、歴史の専門知識がなくとも楽しめるのが“三谷マジック”とも言うべき特徴。三谷監督は「歴史を俯瞰で描きたくなかった」と言う。「それでは歴史年表のように、起きた出来事を順番に見せるだけで、そこにいる人々の想いや心の底まで見せることはできない。“神の視点”で描きたくないので、ナレーションもないしテロップや過剰な説明――織田家の人々の系図やなぜお市様(鈴木京香)が秀吉(大泉洋)を憎むのか? といったこともほとんど説明してない。それでも観ている内に人々の関係がだんだん見えてくるし、観客が偶然あの5日間を清須で過ごし、歴史のなりゆきを目撃したように感じてもらいたかった」。

デビュー作『ラヂオの時間』から『ステキな金縛り』まで常に限られた状況の中で問題、課題に直面する人々を描き“三谷ワールド”と称賛を集めてきた。三谷監督自身「人間の関係性、言ってることと思ってることが違う面白さとか、人から浮かび上がってくるものや笑いを描きたい」と語るが、その意味で、城内での5日間の武将たちの思惑や謀略、本音、裏切りを描いた本作はやはり、“三谷ワールド”の王道を行く作品なのだ。

“オールスターキャスト”という言葉も三谷作品で必ず使用されるが単にスターを集めるにとどまらない。演技、見た目(例:織田家の人々の特徴的な鼻や、各武将のイメージカラーなど)の両面で俳優の個性を最大限に引き出していく。「監督として僕が自信を持ってできることはカット割りや構図を決めることではなく、どれだけ俳優さんを魅力的に見せるか。だからこそ俳優さんを褒められるのが一番うれしいです」。

本作で6本目の監督作となるが“映画監督”を名乗るつもりはない。「特に今回は映画監督ではなく映画ファンとして好きな題材で映画を撮らせてもらい、歴史好きとして好きな史実を再現させてもらった。一昨年、(本作の美術も担当した)種田陽平さんに舞台の美術を初めてお願いしたら、演劇人では考えつかないような発想をいただいたんです。それと同じで僕は映画のプロではないからこその発想で映画を作りたいし、そこにこそ自分の居場所がある。だから今後も自分を映画監督と言い切る瞬間はないと思います」。

『清須会議』
公開中

取材・文・写真:黒豆直樹

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