問題は、その先にありました。本当なら、「毎月5万円を貯めたとして、全額を元本割れするリスク商品に投入していいのか」「提示されている商品は本当に高い利回りが得られるものなのか」「っていうか、そもそも1億円が本当に必要なのか」といった点を疑ってみなければいけないのです。

この会社は、年金不安をあおったり(実際には破綻しないので5000万円も貯めれば十分)、日本はダメだけれど海外には優れた商品がたくさんあるとあおっていました(日本人の自信のなさにつけこむ。海外の商品なので本当に優れているかはよく分からない)。私たちを驚かせ、怖がらせることで、普通の20代、30代にとっては大金であるはずの「毎月5万円」を契約させていた、というわけです。

幸いにして運用に回したお金は消えていないので、悪質な詐欺事件ではありませんでしたが、短期解約の場合は投資金額がほとんど戻ってこない契約だったようで、これも契約の際にチェックすべきポイントといえます。

 

最大の教訓は「本当とウソはごちゃ混ぜ」で出てくること

今回の問題から、「お金の問題に巻き込まれない」ためのいくつかのヒントがあるように思います。

たとえば「華美なCMには注意する(CMで私たちが儲かるわけではない)」「どんなときも無理しすぎた金額を入金してはいけない(例えば定期預金を2.5万円、投資に2.5万円積み立てれば半額は確実に保全される」「高い利回りをあたかも保証したかのような広告は疑うこと(過去の利回りは将来を保証してくれない)」などのポイントは今回学ぶことのできる教訓です。

いくつかのチェックポイントを抑えるだけで、結果として金融商品のトラブルの多くを避けることができます。

相手を疑うなんてあまりやりたくないことかもしれません。しかし、本当に悪質な金融業者は、あなたのお金を持ち逃げすることもありますから、慎重なぐらいがちょうどいいのです。

また、今回の最大の教訓としてもうひとつ指摘してみたいことがあります。それは「本当のこととウソがごちゃ混ぜになって、広告が作られている」ことです。

5万円をうまく運用し続ければ1億円になることとか、海外にも投資をしたほうがいい、というのは本当です。しかし、年金が破綻するといったおどしや、必ず高い利回りの商品を提供できるかのようなミスリードとごちゃ混ぜにすることで、全体として「正しいことのようなイメージ」が作られていきます。

もともと広告が自社の悪口を書くことはありません。それはお菓子でも服でもパソコンの広告でも同じです。金融商品の広告もいいことばかり書いているのではないか、と思ってチェックすると、失敗する確率はぐんと下がるでしょう。

ほとんどの金融商品はまともな商売をしています。ぜひ、悪質な業者にダマされないようにしてみてください。

やまさき・しゅんすけ 「人生の幸せの問題は、たいていはお金の問題である」という考えのもと、お金と幸せについて考えるファイナンシャル・プランナー(FP)。公的年金制度・退職金制度、投資教育が専門。Twitterでは毎日一言「お金の知恵」をツイートしてます。副業はオタクで、まちあるき、アニメとコミック、ゲーム好き。所属学会は東京スリバチ学会と日本年金学会