新店舗「家電住まいる館 YAMADA 横浜金沢店」では、ビフォーアフターでキッチンリフォームを比較展示

ヤマダ電機は3月21日、昨年6月の「インテリアリフォームYAMADA 前橋店」からスタートした業態転換の戦略店「家電住まいる館 YAMADA」を、奈良本店、横浜金沢店、つくば研究学園店、旭川店、川越店、クロスガーデン川崎幸店の6店舗で同時にグランドオープンした。東京の奥多摩町では32年ぶりの大雪警報が発令されるなど、季節外れの雪に見舞われた。横浜金沢店のオープン取材から、ヤマダ電機の新しい店舗戦略に迫る。

新生活の「松竹梅」提案に凝縮

横浜市金沢区富岡東に立地する横浜金沢店は、JR京浜東北線の新杉田駅と京浜急行線の金沢八景駅を結ぶ「横浜シーサイドライン」の鳥浜駅を出てすぐにある。周辺は集合住宅が立ち並び、近くには横浜ベイサイドマリーナや三井アウトレットパーク横浜ベイサイドがあり、休日は家族連れのショッピング客などで賑わう。

同店の売り場面積は6933m2で、1階はリフォームや家具、寝具、日用雑貨、酒、菓子、化粧品、カフェなどで構成され、2階は家電を展示する。ざっくり分けると、1階は非家電、2階は家電というフロア構成だ。

改装前のテックランド横浜金沢店は、1階が業務用スーパーの「肉のハナマサ」、2階の一部にゲームセンターが入っていた。新店ではこれらのテナントがなくなったため、店内は広い通路を確保したり、什器の高さも低くしたりするなどして、ゆっくりと回遊できるようにした。家電を含むアイテム数は従来よりも増えたという。

正面玄関に入ってすぐに展示してある「新生活まるごと提案」というコーナーに、新しい「家電住まいる館」の特徴が凝縮されていた。一人暮らしの部屋をイメージした3つのスペースに、家電製品のほかソファやテーブル、棚、コップ、カーペット、カーテンなど、生活にかかわるすべての商品を「松竹梅」の価格帯別にセット提案し、展示するすべての商品が店舗で売られているのだ。

例えば、「梅」は12万9800円で冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、レンジ、テレビ、こたつ、クリーナーの家電製品のほかベッド、布団・カバー、マットレス、カーペット、カーテン4点、収納家具をセットにしている。収納棚に飾ってあるスタンドやかご、タオル、スリッパもすべて同店で取り扱っている。

同じように「竹」は17万9800円。「松」は26万4800円というように3パターンを提案。冷蔵庫ならヤマダ電機オリジナルのハーブリラックスやシャープ、パナソニックなどとグレード別に単価を変えている。家電だけでなく、タオルやカーペットなどの日用雑貨のグレードも変えることで、多彩な組み合わせ提案を可能にする。まさに「『家電から快適住空間』をトータルコーディネート提案する店」というコンセプトを具現化している。

土井一宣店長は「インテリアコーディネーターの資格をもつ社員を数名配置しているので、1階の家具やリフォームをきっかけに2階の家電を案内したり、逆に2階の家電の買い替えをきっかけにリフォームを提案したり、お客様が自在に行き来できるようにしている」と語る。

まるでホームセンターやドラッグストア

新生活コーナーを通り抜けると、すぐに布団やカーテン、寝具のコーナーが広がる。家電量販店というよりもホームセンターに近い売り場だ。奥に進むとフライパンやコップ、皿、箸、フォーク、スプーンなどキッチンに必要なアイテムを豊富に品揃えするなど、従来の家電量販店のイメージは払拭される。

さらに日用雑貨のコーナーでは、キッチンやバス、洗濯機など水回りのメンテナンスに欠かせない洗剤や柔軟剤、消臭剤も展示。歯ブラシやシャンプーも用意されているので、ホームセンターだけでなくドラッグストアの要素も加わる。ワンストップでの買い物による顧客の囲い込み戦略を強く感じる。

一方で、リフォームコーナーは子会社でハウスメーカーのヤマダ・エスバイエルホームと連携。曜日により異なるが、2名前後の社員がカウンターで接客する。ほかにも既存キッチンとシステムキッチンをビフォーアフターで展示しながら、顧客に使い勝手の違いを体感してもらおうとする工夫がみられる。

2階はヤマダ電機が得意とする家電コーナーが広がる。1階は落ち着いた雰囲気の照明であるのに対し、2階は従来のような明るい照明にした。ほかの「家電住まいる館」では家電フロアも照明をやや落としていたが、ここら辺は従来の利用客が離れないように改善しているようだ。

派手なメーカーPOPを排除

とはいうものの、家電フロアも従来のテックランドと異なる。まず什器の高さが全体的に低く、見通しがいい。「お客様に目的のコーナーに行っていただきやすくするため」と土井店長は狙いを語る。ノートPCやスマートフォンなどデジタル家電の什器を見てもわかるように、メーカーPOPの掲出が少ない。過剰なPOPはかえってノイズになってしまうため、少なくすることで商品にフォーカスをあてている。「什器の下のスペースには周辺機器や関連機器、在庫を置くことで、すぐに提案できるのもポイント」と、土井店長は什器の機能性の高さを語る。

同じようなコンセプトは、冷蔵庫やエアコンの売り場でも顕著だ。冷蔵庫の扉に張るものはプライスカードなど最小限にとどめて、メーカーPOPは本体の間に設けたスペースに展示して統一感をもたせている。逆に、自宅で設置する際に気をつけたいサイズに関する情報は大きく表示し、すべてのモデルの一番下の扉に張っている。派手にPOPを張らない演出について土井店長は「お客様が選択する際に、あるメーカーだけに偏らないように公平な基準で選べるようにしている」と明かす。

エアコン売り場も通常は1スパンを使って、メーカーが最新機種の特徴をアピールしたりするのが一般的だが、横浜金沢店でそれをするのはパナソニックだけで、それ以外はエアコンが壁面の奥まで整然と並んでいる。

新しい「家電住まいる館」は、ホームセンターやドラッグストアのアイテムを積極的に取り入れているが、展示手法そのものはシンプルで機能や効率を重視し、従来のような「安売り一辺倒」の派手な演出は抑えられている。(BCN・細田 立圭志)

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます