8年ぶりに待望の再演を迎える新国立劇場オペラの人気作品「ホフマン物語」。開幕を間近に控えた11月18日、主要キャストに同劇場初登場の実力派歌手陣を迎えて、フレッシュな雰囲気と熱気に満ちた稽古場に潜入した。
オッフェンバック唯一のオペラ「ホフマン物語」は、詩人ホフマンの不思議な恋の遍歴を描いた作品。歌劇場に隣接する酒場で、歌姫ステッラと逢瀬の約束を交わした詩人で音楽家のホフマンは、酒を飲みながら、3人の女性――機会人形のオランピア、歌手を夢見るアントニア、ヴェネツィアの娼婦ジュリエッタとの失恋物語を語るところからストーリーは始まる。
今回久々の再演となる新国立劇場のプロダクションは、“光の魔術師”フィリップ・アルローが演出・美術・照明を手がけ、黒い舞台空間に様々な蛍光色や奇抜な衣装を効果的に使う幻想的な舞台。2003年、2005年に上演され、色彩感溢れる美しい舞台で好評を博した。
この日の稽古は、機械人形オランピアが登場する第2幕。甘いマスクとテノールらしい伸びのある美声で人気を呼びそうなホフマン役のアルトゥーロ・チャコン=クルス、艶のある低音、機微に富んだ表現力で悪役4役を歌うマーク・S・ドス、力強い美声で物語を推し進めるミューズ役のアンジェラ・ブラウアー。同劇場初登場の3人が、早くも息のあった掛け合いを繰り広げ、本公演への期待を高めてくれた。
オランピア役を歌うのは、2003年の初演でも同役を演じた、日本を代表するソプラノの幸田浩子だ。本作品の魅力について「本当に美しくて大好きな舞台。アルローさんは出演者のアイデアもどんどん活かしてくださる方です。特に、第2幕は合唱団の皆さんも、ダンサーさんも機械人形になるので、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさです」という。「ホフマンという男性は、常に愛情をもっていて、傷つきやすく、でも未来に進んでいこうとする心をもっているのが魅力ですね。今回の演出は、最後にミューズとホフマンの愛が美しく描かれて、とても心に迫る舞台だと思います」と見どころを語る。ホフマン役のチャコン=クルスとは、異なる演出だが2010年のあいちトリエンナーレの「ホフマン物語」でも共演済み。「お互いに3年経った分、さらにより良い共演にしたいねと話しています」と意気込みも十分だ。
新国立劇場オペラ「ホフマン物語」は、11月28日(木)、12月1日(日)、4日(水)、7日(土)、10日(火)の全5回公演。チケットは発売中。