アクロスペイラの須田誠 代表取締役CEO

「地元の力があってこそ。一人ではできなかった」と話すのは、アクロホールディングスの取締役でアクロスペイラの須田誠 代表取締役CEO。故郷函館でU-16プログラミングコンテスト(U-16プロコン)を立ち上げた時のことだ。まずは学校を回り先生方に協力を呼び掛けたが「伝え方の弱さから真意がなかなか伝わらず、最初は色よい返事がいただけなかった」という。しかし、粘り強く対話を続けるうち徐々に理解が広がった。その結果、多くの協力を得て、2019年に第一回函館大会の開催にこぎつけた。

きっかけは会社の設立だった。18年、函館に開発拠点としてアクロクレインを立ち上げた。もともとIT教育には興味があった須田CEO。設立準備で学校や企業を回って、函館の子どもたちにはITの情報がとても少ないと痛感した。子どもたちがITに触れる機会をもっと増やせないか……。「会社設立で、旭川市出身の岡田と一緒に動いていた。彼から『旭川で面白いプロコンをやっている』と聞いた」。早速その年の秋、旭川大会を視察。「すぐにいいものだと分かった。函館にはまだ大会がないというので、立ち上げに動いた」。須田CEOは話す。

U-16プロコンは「単にボランティアではなく、ビジネス感覚を併せ持ちつつ社会貢献もできる。CHaserは、純粋にプログラムロジックをつくるという点も素晴らしい。エンジニア候補を育てるのにぴったりだ」。須田CEOはそう感じた。しかし、これまで子ども向けプロコンの立ち上げ経験はない。協力を求め、北海道函館工業高等学校(工業)、函館工業高等専門学校(高専)、公立はこだて未来大学(未来大)、北海道教育大学函館校(教育大)などを訪れた。

須田CEOの熱意に動かされ、工業、高専、未来大、教育大の先生や学生が次々と輪に加わった。「1年目こそは我々が主動して運営していたが、2年目からそれぞれが積極的に動いていただけるようになった。今では楽しんで参加していただいているようだ」という。経費など、最初はすべて持ち出しだった。しかし、先生方の声かけに地元企業が応え、協賛金も集まり始めた。さらに「函館市にも予算をつけてもらい、支援してもらえるようになった」という。函館大会は今年で5回目を迎えるまでになった。

須田CEOは、この経験を活かし、21年に高校生以上が対象のハッカソン「Tornado(トルネード)」も立ち上げた。「より実践に近い形でITプロジェクトを体験し、失敗して学ぶ場にしてほしい」との思いからだ。そして今年、U-16プロコン東京大会を秋葉原で開催すべく、実行委員会を立ち上げた。実行委員長はトルネードのOBだ。「自分一人でできることには限りがある。経営でもプロコンでも、一番大切なのは人と人とのつながり。最後は運だけれど、たとえ失敗しても必ず運は巡ってくる。いろいろなイベントを通じて、子どもたちにもそれを体験してほしい」。須田CEOは笑いながら語った。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)