花總まりが主演を務める「ミュージカル『Romale』~ロマを生き抜いた女 カルメン~」が、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中だ。

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本作は、オペラとしても有名なメリメの小説「カルメン」をベースに、次々と男性を翻弄し“魔性の女”と呼ばれるカルメンが、ロマ(ジプシー)として当時の社会でどのように生き抜いてきたかを演出・振付の謝珠栄の視点で描く作品。10年前に謝珠栄の演出・振付で上演された『Calli~炎の女カルメン~』をもとに台本・音楽を一新したもので、何もかもが違う白人男性への恋の苦しみや葛藤、そしてロマの女への差別など、カルメンの別の一面が描かれる。

カルメンを演じるのは花總まり。カルメンによって人生が変わるドン・ホセを演じるのは松下優也。カルメンに翻弄される、ホセの上司スニーガを伊礼彼方、カルメンの夫ガルシアをKENTARO、イギリス貴族のローレンスを太田基裕が演じる。

物語は、カルメンの真実を研究する社会人類学者ジャン(福井晶一)が、カルメンを知っているという老人(団時朗)と出会うことから始まる。「あの女と暮らしたジプシーから聞いた」と話し始める老人。そこで語られるのは、白人の衛兵ホセがロマの女カルメンと出会い始まった宿命の恋だった。カルメンに身も心も溺れ、「私って女はきっとあんたを不幸にする」と告げられながらも共に生きることを選んだホセ。だが、その狂おしいほどの想いはいつしか嫉妬で乱れ、カルメンが関わる別の男たちに手をかけるようになっていく――。

カルメンをロマの女として“自分のもの”にしたがる男たちの中で、すべてを飛び越えひとりの女性として恋するホセ。松下の真っ直ぐに伸びる歌声や、わき目もふらず彼女を愛する芝居はホセという男の心情だけでなく、カルメンがこれまで男たちにどう扱われてきたのかをもあぶり出す。そんなホセを嫉妬させる男たちを演じる伊礼やKENTARO、太田は、傲慢さやしたたかさを感じさせながらも、それぞれが違うタイプの男性としての魅力や色気も漂わせる。そしてその中で踊るように自由にふるまう、花總のカルメン。男に取り入る姿や、情熱的なフラメンコダンス、自分を殺せとホセに迫る姿など、いわゆるカルメン像が描かれながらも、この作品ではその一歩奥へと踏み込んだ想いや視点が存在する。花總が演じるカルメンは、定番のカルメン像とリンクさせながらも本作ならではの魅力や美しさが鮮明に表現されていた。

舞台となるスペインのテイストが取り込まれた音楽やダンス、華やかな殺陣も注目の公演は、4月8日(日)まで東京芸術劇場プレイハウスにて上演中。その後、4月11日(水)から21日(土)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。

取材・文:中川實穂