パトリシア・ラセット パトリシア・ラセット

トリノ王立歌劇場の『トスカ』のタイトルロールを歌うために15年ぶりに日本にやってきたソプラノ歌手パトリシア・ラセット。この11月にはニューヨーク・メトロポリタン・オペラの檜舞台で同役を演じたばかりで、今やプッチーニのドラマティックなオペラでは、世界中の歌劇場からひっぱりだこのスター歌手だ。

「トリノ王立歌劇場 2013年 日本公演」の公演情報

「私自身、トスカが今一番好きな役です。先日までMETで歌っていたから、今とてもフレッシュに演じることができる作品。相手役の歌手が変われば、私が演じるトスカも変わる。トリノ王立歌劇場との共演は初めてになりますが、相手役のテノール、マルセロ・アルヴァレスとは以前このオペラで共演したことがあります。彼の情熱的なカヴァラドッシは、この愛の物語を共演するのに本当に理想的。指揮者のジャナンドレア・ノセダとは来年『アンドレア・シェニエ』でも共演が決まっていますし、今回のトリノの『トスカ』のプロダクションにはとても期待しているんです」

アメリカ出身の48歳。明るく快活な雰囲気の持ち主で、実年齢よりかなり若く見えるが、歌手としてのキャリアは長い。

「若い頃から活動していたので、オペラ歌手として26、7年歌っています。声質も、成長とともに変化し、自分は今まさにピークにあると感じています。とにかく今は、毎回ベストを尽くすのみ。実は、大学2年までジャズを勉強をしていたんですが、あるとき先生からプッチーニの『修道女アンジェリカ』を歌ってみなさい、とスコアを渡されて…これはとんでもない世界だわ!と一気にオペラに引き寄せられてしまったんです。それまでは、オペラは苦手なほうだったのに…プッチーニが私を導いてくれたとしか思えないわ」

これまでにも『ラ・ボエーム』のミミとムゼッタの二役、彼女を一躍スターにした『蝶々夫人』のタイトルロールなど、プッチーニのヒロインを多く演じてきた。

「中でも『トスカ』はずば抜けて現実的な女性で、これを書いた頃、作者のプッチーニにはトスカのような恋人がいたのではないかと思うほどです。女性を単純化して描いたオペラは多いけど、トスカは本当に複雑で、コロコロ気分が変わるし、大胆さ、繊細さ、力強さ、ユーモアが交互に現れる。それを恋人のカヴァラドッシがコントロールしているんです。トスカは運命に流されず、自分で未来を切り開こうとした点でも、とても新しいヒロインですね」

取材・文:小田島久恵

■トリノ王立歌劇場 2013年 日本公演
◇プッチーニ「トスカ」
11/29(金)・12/2(月)・5(木)・8(日) 東京文化会館 ☆パトリシア・ラセット:12/5、8出演
◇ヴェルディ「仮面舞踏会」
12/1 (日)・4(水)・7(土) 東京文化会館 大ホール
◇ヴェルディ「レクイエム」
11/30 (土) サントリーホール 大ホール