シー・シー・ダブル山梨事業所の井戸隆一所長と同社管理本部の斎藤幸子さん(右)

「実はU-16プロコンの審査員に毎年、必ず1名は社員を加えるようにしている」。そう語るのは、U-16山梨プログラミングコンテストの開催を主動してきたシー・シー・ダブル山梨事業所の井戸隆一所長だ。「子どもたちのアイディアやセンスから大いに刺激を受けるから」だという。東京で窓口を務める同社管理本部の斎藤幸子さんとともに、コンテスト立ち上げの経緯や、その効果について話を聞いた。 シー・シー・ダブルは、金成葉子社長が山梨出身という縁で、2011年にNPO法人山梨ICT&コンタクト支援センターを設立。山梨県のIT系人材の教育・育成を軸に活動を行っている。代表的なイベントは、12年から毎年開催している「山梨ICT地産地消フォーラム」(今年から「地方創生山梨DXフォーラム」に名称を変更)。山梨で育った人材が山梨で働ける環境をつくることなどを目的としてスタートした。セキュリティ分野では、若年層の意識の向上や人材の発掘と育成を目的にする「セキュリティ・ミニキャンプ in 山梨」を16年から毎年開催している。いずれも大学生以上の人たちが主な対象だ。

IT教育・育成活動を子どもにも広げたのが2014年。地産地消フォーラムで開催した、FMラジオをつくる講習会が最初だった。翌15年からはプログラミングができる子どもパソコン「IchigoJam」を使った3時間の講座を始めた。「組み立てに時間がかかり、プログラミングについてはほんの入り口だけだった。そこで、発展形としてCHaserを使ったプロコンに着目した」と斎藤さんは振り返る。こうした経緯で18年、より本格的にプログラミングを学ぶ機会と子どもたちの目標になるイベントづくりを目指して、山梨でもU-16プロコンを立ち上げることになった。都留興譲館高校(当時)の卯月英二先生の協力のもと、事前講習会から大会の開催までこぎつけた。

「一番苦労したのは参加者集め」。井戸所長は語る。「U-16プロコンの初回の参加者は競技部門で2人、作品部門で5人。少し寂しいスタートだった」。地産地消フォーラムの子供向け講座の参加者に声をかけたり、教育委員会に依頼して小学校にチラシを配布してもらったりして、参加者を募った。「伝手をたどって市長から教育委員会に話を通してもらったり、県庁OBなどのつながりから協力を依頼したり」して、参加者集めに奔走したという。地道な努力が実り、回を重ねるごとに参加者も増えていった。昨年開催の第5回大会は競技部門だけでも11名の参加を得るまでに拡大。「作品部門も含めると30名以上の参加規模になってきて、大会自体の運営も効率化が必要になってきた」ほどだという。

作品部門では大人顔負けのプレゼンで斬新なアイディアが飛び出すことも珍しくない。審査や手伝いで参加したシー・シー・ダブルの社員は口をそろえて「参加してよかった」と感想を話すという。確かに主役はU-16の子どもたち。しかし「教えを授ける」場ではなく、ともに学び、成長する場として機能するプロコンは、大人にも大いに意義深いものだといえるだろう。(ITジュニア育成交流協会・道越一郎)