「テーブルに届いたら、ホイップクリームを専用のカトラリーで広げ、押すように切るのが美味しく食べるコツです」

女将が使い勝手を説明してくれたカトラリーがちょっと変わっていた。すべてオリジナル。ポセイドンが握っているような三叉の鉾のようなフォークをホットケーキに刺し、ナイフのようなもので切る。ふわふわな「北海道ほっとけーき」を押さえつつ、切ったほうが食べやすい。

 

 

「北海道ほっとけーき プレミアム」(1,600円/税別)には、ホイップクリームの他、バター、小豆、シロップも付いている。そのシロップはガムシロップでもメイプルシロップでもない。てんさい糖を煮詰めた「てんさい糖蜜」だった。濃厚な味わいに仕上げるため、店の厨房で時間をかけて炊いているのだそうだ。

箸休め用にセミハードタイプのチーズが付いていた。これも北海道産だ。現在北海道にはたくさんのチーズ工房があり、その中から「北海道ほっとけーき」と相性がいいチーズを厳選した。

この店の「椿珈琲」(800円/税別)はネルドリップでいれている。南北に細長い日本では、暖かい地域ほど浅煎りのコーヒーが好まれ、北海道のような寒い場所では深煎りを好む傾向があるという。

札幌に本店があるこの店では北海道人好みのコーヒーを供するため、柔らかな苦味があり、しっかりとしたボディも味わえる深煎りの「椿珈琲」をネルドリップで抽出。酸味が弱く、好きな味わいだった。

「道産ワインを飲んでみませんか。仕事帰りに『北海道ほっとけーき』を肴に、ワインを楽しまれる方もいらしゃいます」と女将にすすめられた。

ホットケーキにワイン? ホットケーキを食べながらワインを飲もうなどと一度も考えたことがない。けれど、ミスマッチなマリアージュを女将が提案するはずもない。

白、ロゼ、スパークリングワイン(すべて800円/税別)の中から、スパークリングワインを頼んだ。ワインは、すべて道央にある「滝沢ワイナリー」のものだ。

これまでスパークリングワインもホットケーキも何度も賞味してきた。もちろん別々だが。恐る恐るスパークリングワインを飲んでみた。ところが、これが意外や意外、ミスマッチでもなんでもなかった。

「滝沢ワイナリー」のスパークリングワインはフルーティーな香りで、シャープな味わい。

ほどよく甘味のある小豆は別にして、シロップにもベタベタとした甘さはない。「北海道ほっとけーき」自体も甘味が立ってないので、シャッキとしたスパークリングワインとのマリアージュはことのほか心地よかった。

女将によれば、「滝沢ワイナリー」のスパークリングワインは、リリースとほぼ同時に完売するぐらい人気が高いという。

「北海道ほっとけーき」には、ボロネーゼソースとグリーンサラダが付く「北海道ほっとけーき ボロネーゼ」(1,800円/税別)もある。ホットケーキとボロネーゼを別々に食べるのではない。「北海道ほっとけーき」にボロネーゼをかけて食べるのだそうだ。どんな味なのか、どんな食感なのか、肉フェチとしては興味津々。次回はランチに頼んでみたいと思う。

8枚切りのパンほどの厚みがあるホットケーキを、どうやって焼いているのか気になる人も多いはず。プレートで焼成しているところをガラス越しに覗くことができるので、興味がある人は見せてもらうといいだろう。

【椿サロン銀座】
住所/東京都中央区銀座6丁目6-19 新太炉ビル3F
電話/03-6263-9450
営業/11:00~20:00(LO18:30)
無休

※「椿珈琲」、「滝沢ワイナリー」のワインは、「北海道ほっとけーき」と一緒に注文すると単品価格が200円安くなる。

東京五輪開催前の3歳の時、亀戸天神の側にあった田久保精肉店のコロッケと出会い、食に目覚める。以来コロッケの買い食いに明け暮れる人生を謳歌。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』、『自家菜園のあるレストラン』、『一流シェフの味を10分で作る! 男の料理』などの他、『笠原将弘のおやつまみ』の企画・構成を担当。