ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』 ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』

アメリカ児童文学の名作『足ながおじさん』を原作としたミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~』。昨年9月の初演、その4か月後に行われた異例のアンコール公演を経て、待望の舞台が来年3月、再び東京・シアタークリエに登場する。少々変わり者だが心優しい慈善家の青年ジャーヴィスと、孤児でありながらつねに希望を胸に抱いて溌剌と生きる少女ジルーシャ。微笑ましいエピソードを重ねてふたりがゆっくりと心を通わせていくロマンチックな恋物語は、井上芳雄と坂本真綾というベストキャストの好演により大反響を巻き起こした。多くのファンの呼び声で実現した今回の再々演について「とにかく嬉しい。これほどお客様に愛されて、喜んでもらえる作品をほかに知りません」と語る井上と、「皆を幸せにする不思議な力を持った作品。また、たくさんの人とハッピーを分かち合えることが本当に楽しみ」と目を輝かせる坂本。再び息を合わせるふたりに舞台への思いを聞いた。

ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』チケット情報

「この舞台の魅力は作品自体の完成度の高さと、ジョン・ケアードさんの演出の素晴らしさにあると思う。それと真綾さんの頑張りですね。オープニングからずっとジルーシャはしゃべり、歌い、動き続けるところがすごい。真綾さんのジルーシャは最高にチャーミングです!」そう井上が言うように、ジルーシャは舞台上でセットを動かしたり、衣装を着替えるなど大奮闘。その中で彼女は、自分を援助してくれる謎の“足ながおじさん”に向け、好奇心いっぱいの質問を織り交ぜたユニークな手紙を綴っていく。キビキビと動き回りながら手紙の文面を語る坂本の、聡明で涼やかな表情が印象に残る。対する井上は、機知に富んだジルーシャの手紙に、徐々に心を動かされていく様子を繊細に表現。知的さと少年ぽさが混在した表情がなんとも魅力的で、タイトルどおりの足の長い、スラリとした体躯にも目を奪われる。

「ジルーシャの手紙の内容に細かく反応して、ジャーヴィスの心境を表現される井上さんはとても可愛いんです(笑)。ジャーヴィスの品の良さ、頑固さ、ピュアなところなど、井上さんご自身にも通じる部分があるのでは……と勝手に思っています」と坂本。おおらかな大地と澄んだ空気を感じさせる原作の味わいを、最強コンビがいっそう丹念に、情感豊かに魅せてくれることを期待したい。

「私自身もジルーシャの活き活きとした言葉に共感したり、励まされています。今回も、言葉を丁寧に届けることを大切に演じていきたいです」(坂本)。「流れるようなメロディが心地良く、胸が締めつけられるような魅力もあります。女性はもちろん、男性にも必ず好きになってもらえると思う」と意気込む井上からは、最後に力強い宣言が飛び出した。「ミュージカル界の『放浪記』を目指します(笑)」。

公演は2014年3月1日(土)から22日(土)まで。チケットの一般発売は11月30日(土)午前10時より。

取材・文 上野紀子