板尾創路

『釣りバカ日誌』の原作者・やまさき十三氏が72歳にして映画監督デビューを飾った『あさひるばん』がまもなく公開となる。“あさ・ひる・ばん”の愛称で呼ばれた高校野球部の名物トリオの30年後の再会と奮闘を描いた本作で“ひる”こと日留川を演じたのは独特の存在感でTVに映画に引っ張りだこの板尾創路。公開を前に板尾に話を聞いた。

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「これまでに実はあまりやったことのない明るいコメディで、笑いがたくさんあってハートフル。『釣りバカ』シリーズの流れ、雰囲気を汲んでいて、いろんな人に観てもらえる作品だと感じた」と最初に脚本を読んだ感想を明かす。

やまさき監督からの「自由にやってください」との言葉通り、“あさ”と“ばん”を演じる國村隼、山寺宏一と話し合いながら現場で3人組の空気を作り上げていったという。「仲が良いのか悪いのか分からないのが友達だと僕は思う。高校時代の野球部で青春を共に過ごした3人ですが、あまりベタベタと仲が良い感じではなくいい距離感のトリオにしたかった。普段からあまり、役を作り込むようなことはしないんですが、今回は特に3人の空気が大事。実際、現場でやってみて、國村さんがそう来るならおれはこんな感じで、そしたら山寺さんは…という感じで無意識に3人のキャラクターが出来上がっていきましたね」。

30年ぶりに集まった3人は、かつての憧れのマドンナで、いまは病床にある元マネージャーの幸子(斉藤慶子)の一人娘・有三子(桐谷美玲)のために奔走する。有三子の結婚式のシーンでは3人が“パパ”として出席する。板尾自身、娘を持つ父親であり、子煩悩として知られるが、父親として娘とバージンロードを歩いた感想は? 思わずウルリとしてしまった瞬間は?「いやいや、うちはまだ小さいんで、全然、想像がつかなかったです(笑)。いつかは自分にもそんな日が来るのかな? と思いつつ、いまいち実感がわかないですね。まあ桐谷さんみたいなかわいい子が娘だったら、ウルッとくるかもしれませんが…どうでしょうね(笑)?」。

いまや俳優が本業の人と変わらない、いやそれ以上の仕事量を誇り、ジャンルも役柄も多彩。板尾自身は「自分の中でお笑いの仕事と俳優、あまり別物って感覚はないんです」と語り、やってくる仕事を淡々とこなしつつ「楽しんでいる」。さらには役者にとどまらず、自らのオリジナル脚本により監督までこなすが「監督業に関しては、自分が観たい映画を作っている感覚」だという。「映画を作る面白さ? 人のお金で楽しく物を作らせてもらって、それが作品として残るというところですかね(笑)」と冗談とも本音ともつかない口調で語るが、この掴みどころのない、ぬらりとした存在感こそこの男の真骨頂と言える。「いまもね、新しい脚本を書いてるところなんです」――。いったいどの角度から何が飛んでくるのか? まだまだこの男から目が離せない。

『あさひるばん』
11月29日(金)ロードショー

取材・文・写真:黒豆直樹