ソニーのアクションカム「HDR-AS30V」

自転車(ロードバイク)でサイクリングロードや一般道路を走り、史跡や名所などを訪れるツーリングを趣味にしている。これまでは、走行中の映像を記録できずに残念に思うシーンがいくつかあった。しかし、小型のウェアラブルカメラ「アクションカム」があれば、簡単に動画を撮影できると知り、興味をもった。タイミングよく、ソニーのアクションカム「HDR-AS30V」を借りることができたので、週末2日間にわたって自転車で使った感想と、活用のポイントを紹介したい。

●スポーツやアウトドアに強く、迫力のあるフルHD動画を撮影できる本格派

ソニーのビデオカメラというと「ハンディカム」が思い浮かぶが、「アクションカム」は、その名の通りスポーツやアウトドアなどのアクションに強く、からだや自転車などに取りつけて、迫力ある映像を撮影できる超小型のビデオカメラだ。昨年発売した「HDR-AS15」に続く第2世代の「HDR-AS30V」は、新たにGPS機能を搭載し、ソニーのデジタル写真管理ソフト「PlayMemories Home」上で、位置情報を活用した「マップビュー」や「マルチビュー」を楽しめる。「マルチビュー」の動画は別ファイルとして保存でき、ウェブ上で公開することもできる。記録メディアは、メモリースティックマイクロ(MARK2)またはmicroSDXC/SDHC/SDメモリカード(Class4以上推奨)で、カメラ本体はUSB経由で充電する。

約90gの軽量・小型ボディながら、総画素数約1680万(有効画素数1190万)の裏面照射型“Exmor R(エクスモアアール)” CMOSイメージセンサ、最大170°の広角撮影に対応するカールツァイス テッサーレンズ、激しいアクションでもブレを抑える電子式手ブレ補正機能を搭載し、最高1920×1080 60pのフルHD画質の高画質ムービーを撮影できる。普通のムービーカメラとは一線を画した電子式手ブレ補正の効果は、実際に撮影した動画を見て確認してほしい。付属のウォータープルーフケースを使用すれば、水深5mまでの防水・防塵・耐衝撃・耐低温性能を発揮。さらに、ライブビューリモコンなど、別売の多彩なアクセサリと組み合わせることで、さまざまなシーン・用途で活用できる。今回は、ロードバイクと折りたたみ自転車に取りつけて使った。

●あると便利! ワイヤレスでカメラを操作できるライブビューリモコン

カメラ本体と同時に12月6日発売予定のライブビューリモコン「RM-LVR1」を借りることができたので、走行レポートの前にその使用感をお伝えしたい。

「RM-LVR1」は、一般的な腕時計に比べるとかなりゴツいデザイン。3m/連続30分の防水性能を備え、急な夕立など、雨中を走行しても安心だ。装着面内側にシリコンのアタッチメントがあり、ベルクロのバンドで締めつけ具合を微調整して、細めの手首でも違和感なく装着できる。設定によって画面を上下反転できるので、右手に装着して左手で操作しても問題はない。

カメラ本体とはWi-Fiで接続し、録画のスタート/ストップ、撮影中の映像の確認、撮影モードの変更ができる。手元で操作するので、特にカメラ本体を自転車のリア側など、手の届かない場所に取りつけたときに便利だ。録画スタート/ストップのボタンは大きく押しやすいので、グローブをはめたままでも難なく操作できた。

自転車で使う場合、これはあくまでもライブビューつきでカメラを操作するためのリモコンであり、デジタルカメラのように撮影した動画や写真を再生する機能はないことに注意したい。あると便利なことは確かだが、単体で1万5750円という価格を考えると、悩むところだろう。実は、スマートフォンでも同様にワイヤレスでカメラを操作できるからだ。

●アプリを使えばスマートフォンをリモコンとして使える 動画の転送もラクラク

手持ちのスマートフォン・タブレット端末に、無料のソニー製Wi-Fi対応カメラ用アプリ「Play Memories Mobile」(Android/iOS版)をインストールして設定すると、スマートフォン・タブレット端末をリモコンとして利用できる。さらに、撮影した動画や写真をスマートフォン・タブレット端末に転送したり、YouTubeやFacebookなどに動画を直接アップロードしたりでき、使い勝手のよさは、ライブビューリモコンを上回る。水辺で使いたい、カメラをからだに取りつけて動きながら撮影したいなど、特定の目的がなければ、遠隔操作はスマートフォンで十分かもしれない。

ただし、パスワード入力など、アプリを利用するための初期設定はやや面倒。また、アプリを起動するたびに機器を検索するので、何らかの理由でエラーが発生すると利用できない。その弱点を補うために、カメラ本体にNFC(近距離無線通信)を搭載し、「Xperia Z1」など、NFC対応スマートフォンなら、カメラ本体にスマートフォンをかざすだけで、アプリが自動起動してカメラを操作できるようになっている。ワンタッチ起動以外はWi-Fi接続となり、初期設定が非常にかんたん・スピーディになる。

●「電子式手ブレ補正」の実力をチェック!

まずは1日目。別売のハンドルバーマウント「VCT-HM1」を使って、折りたたみ自転車のハンドルにカメラを取りつけ、ウリの一つである電子式手ブレ補正機能の実力をチェックした。その補正度合いを確かめてから、2日目、同様に電子式手ブレ補正機能のオン/オフによって、どれくらい変わるのかを試した。

折りたたみ式やミニベロタイプの自転車はタイヤ径が小さいので、路面の衝撃がハンドルにダイレクトに伝わりやすい。こうした特性もあり、未舗装路では、舗装路走行中ほどのブレ補正効果は得られなかった。

対して、ロードバイクはタイヤ径が大きく、カーボン製のフロントフォークが路面からの衝撃をある程度吸収するので、電子式手ブレ補正機能をオフにしていても、そこそこ滑らか。さらに、補正機能をオンにすると、舗装路走行中のブレはかなりの程度で補正された。一般的な道路なら、「手ブレ補正」の効果はしっかり感じられるだろう。

●いざ、湘南海岸サイクリングロードで実走! 物珍しさで注目の的!?

レビュー2日目、「アクションカム」の基本的な操作方法に慣れてきたところで、ロードバイクのハンドルにカメラを取りつけ、妻とともにサイクリングに出かけた。走ったのは、神奈川県茅ヶ崎市から藤沢市鵠沼海岸付近までのおよそ8kmに渡るサイクリングロードだ。自転車だけではなく、歩行者やランナー、サーファーなども多く、スピードを上げて走ることはできないが、烏帽子岩や江ノ島を遠くに眺めつつ、湘南の潮風を感じながらのんびりとペダルを漕いだ。

終始砂浜沿いの小道で、茅ヶ崎側から出発すると、ずっと右側に海が見える。ハンドルバーマウント「VCT-HM1」は、カメラの取りつけ角度を水平方向360°、垂直方向105°の間で調整できるので、正面だけでなく、進行方向に対して2時から3時の方向に向けての撮影も試した。

明るさ調整やホワイトバランス、逆光補正のオン/オフなどはすべて自動なので、走行中に設定を変更する必要はない。アクティブな撮影でもくっきり撮れるという「“Exmor R” CMOSセンサ」の実力は確かなようだ。

●バッテリ駆動時間にはやや不満 メモリカードは大容量がベスト

今回のサイクリングは片道1時間程度だったが、本格的な自転車旅行やツーリングでは、日の出から日没間際まで走り続けることもある。そうなると気になるのはバッテリのもちだ。カタログによると、満充電時からの連続撮影時間は、画質VGA、25℃で約2時間20分ということだが、実際には使用状態によって短くなる。

スローモードを含む六つの撮影モードのうち、終始、STDモード(1280×720 30p)か、HQモード(1920×1080 30p)で動画を撮影し、Wi-Fi接続のライブビューリモコンをフル活用していたからか、帰路の途中、思っていたよりもだいぶ早いタイミングでバッテリがなくなってしまった。長時間走行する際は、予備のリチャージャブルバッテリパックを複数用意するか、Wi-Fiをオフにして、静止画やシャッター操作を行わなくとも一定間隔で200万画素相当の静止画を自動撮影する「インターバル静止画記録」をメインに利用し、ここぞというときだけ動画を撮影するようにして、バッテリの消耗を抑えたほうがいいかもしれない。

ちなみに、「HDR-AS30V」は、動画に加えて最大1190万画素相当の静止画も撮影できる。画質の面ではデジタルカメラには及ばないものの、走行中にシャッターチャンスを逃すことなく、ワンタッチで撮影できる点は便利だと感じた。前述の「インターバル静止画記録」は、通常は一瞬で過ぎ去ってしまう風景の記録にも役立つ。

注意点として、メモリカードは、できるだけ大容量のものを使用したほうがいいだろう。今回は手持ちの少ない容量のメモリカード(4GBのmicroSDHCカード)を使用したために、撮影中に容量がいっぱいになってしまい、いつの間にか録画が止まっていたという事態も招いた。本体には残りの撮影可能時間が表示されるが、こまめにチェックするのは面倒。目的に応じて、フルHD/HDではなく、長時間記録できるSDモード(640×480 30p)を選んでもいいだろう。肉眼では、フルHDのHQモードとHDのSTDモードの画質の差はほとんど感じられなかった。

●撮影後は「マルチビュー」でさらに楽しめる 動画のカット編集もカンタン

「HDR-AS30V」は、GPS機能を搭載し、撮影中にたどった道筋などの情報が動画とともに保存され、PC用デジタル写真管理ソフト「PlayMemories Home」に取り込んで再生すると、動画に移動速度や軌跡などのGPS情報を合成した「マルチビュー映像」を作成することができる。約1年前に購入したWindows 7搭載ノートPCで試してみたところ、どうやら性能不足らしく、フルHD動画は処理途中で止まってしまったが、720pのハイビジョン動画では、問題なく作成できた。二つの映像を1画面に表示することもでき、撮った映像とともに走行したルートや時速などが表示される「マルチビュー」は、ハードとソフトの連携の一つの試みとして、なかなか面白いと感じた。

「PlayMemories Home」のWindwos版(Windows 8/7/Vista/XP)は、ほかにも、写真のトリミングや補正、動画のカット編集・結合、動画からの静止画切り出しなどの編集機能、ディスクの作成、印刷など、さまざまな機能を搭載する。また、クラウドサービス「PlayMemories Online」に登録してアカウントを連携させておけば、YouTube、Facebookなどに加え、「PlayMemories Online」に、写真・動画を自動または手動で簡単にアップロードすることもできる。最新バージョン(Ver.3.0)からソニー製品登録者以外でも利用できるようになり、今回のレビューを機に、初めてインストールしたが、無料とは信じられないくらいの多機能さだった。デザインやインターフェイスは好みの分かれるところだが、このソフトがあれば、撮りっぱなしになりがちな動画・写真をうまく管理・活用できそうだ。なお、Mac版は、Ver1.0のため、Windows版に比べると機能は少なく、前述の「マルチビュー」には対応していない。

●発展・改善の余地はあるが、自転車旅行好きなら「買い」!

筆者のように自転車旅行やサイクリングが趣味の人には、「HDR-AS30V」はかなり魅力的だ。普通のデジタルカメラやスマートフォンでは、走行中に撮影することは難しく、途中で立ち寄った観光地で記念写真を撮るしかないが、「アクションカム」一つあれば、さまざまなアングルから走行した道の景色を記録に残すことができるからだ。いつか変わってしまう景色や、二度と訪れることがないかもしれない場所をリアルタイムに記録する、いわば自分視点の「ストリートビュー」。アクションカムは、思い出づくりや、スポーツなどの活動の記録に大活躍しそうな注目のアイテムといえるだろう。(ナカジマヒロシ)

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