JR川崎駅近くのオフィス街に店を構えるパソコン専門店のドスパラ川崎店。オープンから約10年と比較的歴史が長く、お客様とフレンドリーな関係を築いてパソコン上級者を確保している。こうした固定客が新しいお客様を連れてくることも多い。ドスパラは、東京・秋葉原電気街に本店を置き、全国に20店舗を展開。川崎店は、都市型店舗と地方の郊外型店舗の両方のよいところを川崎の地で生かし、パソコン関連のコンビニエンスストアを目指している。(取材・文/佐相彰彦)

ドスパラ川崎店

店舗データ

住所 神奈川県川崎市川崎区砂子1-1-18 NR共同ビル1F

売り場面積 約130m2

客層 30~40歳代の男性

従業員数 4人

●駅周辺がショッピングゾーンに変貌 長い歴史と口コミで固定客を確保

人口142万の川崎市は、神奈川県内では横浜に次ぐ商業都市の顔をもつ。JR川崎駅は1日平均乗降客が19万人弱で県内2位、京浜急行線も約14万人の県内3位で、駅周辺にはアトレ川崎や川崎モアーズ、川崎ルフロン、ラゾーナ川崎プラザなどの複合施設が建ち並び、飲食店も多い。その周囲はオフィス街で、バランスのいい都市圏を形成している。

しかし、2000年前半までは、東京や横浜へのアクセスのよさから客が流れ、ショッピング街の規模はそれほど大きくなかった。家電量販店も存在感が薄く、秋葉原や有楽町、横浜などに客を奪われていたといっていい。潮目が変わったのは、ヨドバシカメラとビックカメラが大型店舗をオープンした04年頃からだ。

ヨドバシカメラは、04年3月、JR駅東口の川崎ルフロン内に売り場面積1万4500m2と関東圏最大級の店舗、マルチメディア川崎ルフロンをオープンした。一方、ビックカメラは、西口のラゾーナ川崎プラザにラゾーナ川崎店を06年9月にオープン。複合ショッピング施設の登場と大手家電量販店の開店は、人の流れを大きく変えた。

駅周辺が変貌するなかで、着実にお客様を確保してきたのがドスパラ川崎店だ。オープンしたのは約10年前で、秋葉原電気街に通うパソコン上級者のなかに川崎の人がいて、「駅の近くにあったら便利」という声が上がったことが出店のきっかけだった。お客様の要望をもとに進出したこともあって、オープン当初からパソコン上級者を中心にお客様を獲得。そのお客様がお客様を呼んで、多くの固定客を確保している。江崎康広店長は、「今でも、オープンの頃から来店されている30~40歳代の男性がお客様の中心」という。

●フラッシュメモリで女性が来店 確実な購入に結び付ける接客

ドスパラ川崎店は、JR駅から徒歩5分ほどの市役所通り(東京都道・神奈川県道9号線)に店を構えている。近くには川崎銀座街という商店街があり、多くの人で賑わう場所だ。

売り場面積は約130m2と、駅前の大規模量販店に比べるとかなり小さい。ところが、商店街の存在や周囲に小売店が密集していることなどが有利に働いて、たくさんのお客様が来店する。江崎店長が「気軽に店に入っていただけるよう、ケーブルやリモコンなどの雑貨を店頭で販売している」と説明するように、最近は店舗の前を通り過ぎる人に足を止めてもらえるような売り方に力を入れている。また、便利でデザイン性もあるデジタルグッズであるフラッシュメモリに関して、できるだけ多くのメーカーの製品を揃えるようにしたことで、女性や学生が来店するようになった。「隣の携帯電話ショップでスマートフォンを契約したお客様に、当店で雑貨やフラッシュメモリを購入してもらっている」という。

入り口近くには、稼ぎ頭の自社ブランドパソコン「ガレリア」シリーズを展示して、パソコン専門店であることをアピール。組み立てパソコン用パーツでは、国内で独占販売しているPALIT製ビデオカードが自作派の関心を高めている。

一番の強みは、深い商品知識でパソコン上級者を納得させ、しかもパソコンに詳しくないお客様でも理解できる接客だ。例えば、ネットゲームのヘビーユーザーにSSDを提案する際には、メリットとして次の画面に切り替わる際の読込みが非常に速いことを説明しながら、実際にデモを見せて購入に結びつけている。

パソコンにあまり詳しくないお客様に対しては、用途に応じて価格を抑えたモデルを勧めることで、お客様の多くが納得して購入する。江崎店長は、「パソコンとパーツ両方の商品知識に詳しいスタッフが揃っている」と自信をみせる。

サポートでは、ほかの店舗で購入したパソコンのトラブルにも対応する「ワンコイン診断」のほか、「状況を説明してもらえれば、たいていのトラブルには対応できる」というトラブルシューティング力も自慢だ。週末には家族連れが訪れるようになってきたという。

スタッフの深い商品知識によって固定客との関係を構築しながら、新たなお客様を獲得する品揃えと接客に力を入れることで、家電量販店にはないパソコン専門店のよさを確立していく。江崎店長は、「電気街の店舗と郊外型店舗の中間に位置する店舗を目指す」と目標を口にした。

●責任者が語る人気の理由――江崎康広 店長

江崎店長は、秋葉原、大阪、名古屋の電気街にある店舗を経験したほか、金沢で郊外型も経験している。そのノウハウを生かして、電気街と郊外の中間店舗というコンセプトを立てた。「誰でも来店できるパソコンのコンビニエンスストアでありたい」と、言葉には力がこもる。スタッフは4人だが、少数精鋭で多くの固定客を確保している。「実力のあるスタッフがいるからこそ、専門店のなかでも本当のプロの専門店として成長することができた。どのようなお客様でも応対することができる」と自信を述べた。現在、固定客は来店者の6~7割。固定客の数を維持しながら、新たなお客様を増やしていく方針だ。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2013年11月25日付 vol.1507より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは