AIを活用したカメラは動線分析普及の決め手となるか

来店から回遊、購入、退店までを見守るカメラを活用した顧客の動線分析は以前からある技術だが、一部の店舗や売り場で実証する段階をなかなか脱していない。コストに見合う効果を得るのが難しく、各小売業者は本腰を入れて拡大するのに二の足を踏んでいる印象だ。しかし、こうした状況はAIの活用によって前進するかもしれない。

3月6日から9日までの4日間開催された店舗向け情報システムの展示会「リテールテックJAPAN 2018」(日本経済新聞社主催)の「AI」で括られた出展エリア。その中に“顧客動線”にフォーカスをあてたブースがあった。

米国カルフォルニア州に拠点を構えるRetailNextは、カメラに組み込んだセンサとヒートマップで来店者数・滞留パターン・滞留時間・コンバージョン率・平均取引額などを測定するソリューションを展示。1台あたりのカバー領域が広いだけでなく、複数のカメラと連携して店舗全体からデータを収集できるのが特徴だ。

読み取れる情報量が豊富で、展示の体験コーナーではエリア内にいる人の数や身長を正確に把握。製品の種類も認識し、人が手を伸ばすとその動作もログに記録される。身長まで読み取るのは、子どもやペットといったマーケティングデータのノイズを排除するためだという。ディープラーニングによって店舗に最適化された細かい配慮にまで対応することができる。

行政からもデータを活用した動線分析の普及を後押しする動きはある。日本経済新聞は3月30日に、経済産業省がカメラの画像をAIで分析してマーケティング利用する「リピート分析」の指針をまとめたと報じた。

近日中に公表するこの指針では、主に顧客の個人情報にあたる顔の特徴や属性、購入履歴などを個人情報保護法にもとづいて運用するよう求めるという。データの取り扱いに伴うプライバシー保護は各小売業にとって懸念材料の一つだった。ガイドラインが策定されれば、導入店舗の拡大がしやすくなる。

一方でリテールテクノロジーに関しては、スマホ決済やRFIDなどの分野でも行政の仕切りで導入が図られているが、いまひとつスピード感に欠ける側面もある。リピート分析についてはガイドラインの一歩先まで筋道を示すのか、また他のテクノロジーと統合したパッケージを用意するのか。喫緊の課題と捉えるのであれば、見通しが不透明なロードマップに乗るより、小売業者自らが先行して前例をつくっていく必要があるだろう。(BCN・大蔵 大輔)