黒木渚 黒木渚

今年10月に2枚目のシングル『はさみ』をリリースした黒木渚が、リリースツアー「やわらかなハサミ」の最終公演を11月30日に東京・東京キネマ倶楽部で行った。

2013年の2月に上京して活動の拠点を東京に移し、今年を「勝負の年」と位置づけてきた彼女たちは、6月1日にキャパシティー200人のCLUB Queで初のワンマンを開催。ちょうど半年後となったこの日の公演は実に3倍となる600枚のチケットが完売。今回のワンマンツアーで各地をまわり、ファンと直接触れ合った彼女たちは、「武道館公演が実現するまでは絶対に死ねません」という声を数多くかけられたと語り、改めて、「2年以内に武道館公演を叶え、さらに大きなステージへ」というファンとの約束を固く誓った。

オープニング映像が投影されていた紗幕が下りると、レースが縁取られた真っ白いタイトなワンピース姿の黒木渚が仁王立ちで登場。時に、頭をかきむしりながら、ステージ上を右往左往し、激しいロックナンバー『プラナリア』や、自由自在のビート変化をみせる『クマリ』、音の波に身を任せるように歌う『マトリョーシカ』など、昭和のキャバレー音楽からキャッチーなポップロックに4ビートのジャズまで、多彩なナンバーを立て続けに演奏した。

「今年の集大成になるようなライブにしたい。今日という日をあなたの中にずっと鮮やかに焼き付けるためにも全力でやっていきます」というMCのあと、“ひとつの演劇を見ているかのよう”と称される独特の世界に突入。『エスパー』では、手にした銀のスプーンをサビに合わせてぐにゃりと曲げ、未発表曲『ウエット』では、シャワーの水が流れる音とともに楽曲の中の主人公の背景がセリフで語られ、『安藤麻衣子』では、三拍子の指揮をとりながら、苦しみをゆっくりと表現。続いて、「真夜中、時計の音、ひとりぼっち、あなたは机の引き出しを開けます」というセリフとともに、最新シングル『はさみ』をエモーショナルに歌い上げた。

さらに、攻撃的なロックチューン『テーマ』、黒木のか弱いウィスパーと叫びにも似たストロングな歌声が交錯する『赤紙』と続け、観客の興奮が覚めやらぬ中、半年後の2014年6月1日に東京・渋谷公会堂でワンマンライブを開催することが本人の口から発表され、会場からは、割れんばかりの歓声が起こった。最後に「本当に楽しかった。生きてる実感があった」と語り、黒木渚流の行進曲『骨』を笑顔で高らかに歌い上げ、本編の幕は閉じた。

アンコールでは、彼女自身が日本語歌詞をつけたイギリス民謡『ダニーボーイ』のカバーに続き、ファンに問いかけたツイッターのリプライを基に書かれた新曲『ロマン』を初披露。ファンとの再会の願いを込めた『カルデラ』を歌い切ったところでステージをあとにしたが、それでも観客の声は鳴り止まず、ダブルアンコールが実現。全編英語詞の『No Reason』で会場全体を1つにし、「ありがとう。バイバイ」と語り、ステージをあとにした。

Report by 永堀アツオ