合った職を探す。それが才能よ。才能ってのは、何も、創る人間にだけ使われる言葉じゃないと思う。(「成りあがり」より)

ミュージシャンの道を迷いなく選んだように思える矢沢永吉だが、その道にはいくつもの困難があった。それを矢沢が乗り越えてこられたのは、ひとえに自分自身の才能を信じていたからだ。

矢沢は「成りあがり」の中で、「才能とは合った職を探すこと」だと語っている。才能とはクリエイティブな職業に就けた人間にだけ与えられるものではない。自分には何ができるのか。どんな仕事が向いているのか。それを見つけることが、自分の才能を見つけることなのだ。

 

 

いま、キツイと思ってるやつ。誰も助けてくれないよ。おまえが、そのまま自分のはぐれる気持ちを継続さすと、ますます、まわりは「待ってました」とやってくる。おまえらは、反撃したくないか。(「成りあがり」より)

矢沢永吉をサクセスに導いたのは、常に前を向き全力で走り続けるその姿勢だ。矢沢にも辛い時期はあったし、どちらかといえば反抗心をむき出しにした社会のはぐれものだった。

だからこそ矢沢は著書で若者に向けてこう書いている。「反撃するって、どういうことか。おまえ自身に負い目がなくって、自分で、てめえの手でメシを食ってるんだという誇りを持つことだ」と。

自分自身の手で社会を生き抜いていくこと。それこそが矢沢永吉が言う「反撃」だ。さて、君は「反撃」できているだろうか?

 

臆病っていうのは、ある種のレーダーなんだ。臆病だから考える。臆病だから、勝つために冒険する。(「アー・ユー・ハッピー?」より)

いつでも強気で自信満々に見える矢沢だが、実際は「臆病な人間なんだ」という。50歳を過ぎてから書かれた「アー・ユー・ハッピー?」では、そんな彼の人間的な面、弱い部分も赤裸々に綴られている。

矢沢は言う。「臆病さは、人間として素直な部分だと思う。(中略)オレは天から選ばれた人間でもあるし、本当は何もない男でもある。両方わかってないといけない。自分が臆病というのもわかっている。世の中で大成した人ほど、臆病だと思う」と。

若い頃は、臆病さを認めたくなくて、無謀な賭けに出てしまうことがある。でもそれは「勇敢」ではないと矢沢は諭している。それは、彼が数々の失敗を乗り越えてきたからこその言葉なのかもしれない。

 

 

簡単なんだ、ルールってものは。小学生の頃に憶えたことだけだ。借りたら返す。それを、守るってだけのことだ。(「アー・ユー・ハッピー?」より)

矢沢永吉はかつて「オーストラリア事件」で身内の裏切りと横領に遭い、30億円以上の被害を出した。「成りあがり」や「アー・ユー・ハッピー?」を読めばわかるが、矢沢は決してビジネス音痴ではない。むしろミュージシャンにしては珍しいほどのビジネスマンでもある。

彼がなぜそうした考えを持つようになったのかは2冊の自伝を読んでいただくとして、そんな矢沢が詐欺事件を語る際にまず書いた言葉が、この「借りたら返す」だ。

矢沢曰く、社会のルールはそれだけ。逆にいえば、「借りたら返す」すらも守れない人間が多いということでもある。すべての基本である「借りたら返す」を、君はちゃんと守れているか?