「アキバ☆ソフマップ LIVE」に出演する佐山彩香さん(左)、空野青空さん

ソフマップは、生配信の動画と商品販売を連携させた「ライブコマース」の事業を4月から開始すると発表した。アイドルや声優が同社のスタジオからファン向けに動画番組を配信し、番組内でCD・DVDやグッズを販売する。サービス名は「アキバ☆ソフマップ LIVE」で、スマートフォンとPCの両方で番組の視聴が可能。

3月28日に行われた発表会に登壇した渡辺武志社長によると、同社は全国の店舗でアイドルや声優のイベントを年間約1300件開催している。イベントは出演者に関連する商品の購入客が対象となることから、集客・物販の拡大に効果をあげていたが、開催店舗の遠方に住むファンが参加しにくいといった問題があった。「(芸能ニュースの写真等で)ソフマップのロゴは知っているが、店には行けないという方も多数いる。それらの皆さんにリーチできていなかった」(渡辺社長)

アキバ☆ソフマップ LIVEでは、秋葉原地区で開催する店頭イベントの前後などに、出演するアイドルが番組配信を実施。配信画面では視聴者がコメントを投稿できるほか、同じ画面上で商品の購入が可能。アプリ等のインストールは不要で、ウェブブラウザを通じて視聴・購入が行える。

2月に行った試験配信に出演したアイドルの空野青空さんは、「『在宅戦士』(※戦士=空野さんのファンのこと)の方々ともコミュニケーションを楽しみながらアルバムを販売することができた。購入した方のユーザー名がわかるので、名前を呼んでお礼を言うことができて嬉しかった」とコメント。番組中、グッズに相手の名前入りでサインを書き込むといったファンサービスも行えるので、ECサイトでの通常のグッズ販売よりもプレミアム感を高めることが可能。

ソフマップではユーザーの反応を確かめながら、将来的にはアイドル・サブカルチャー商材だけでなく、PC関連など同社が扱う他の商材にもライブコマースを拡大することを視野に入れる。アイドルイベントでの「ソフマップ」ブランドが強力なことから、アイドルを軸にしたライブコマースが、同社のEC事業全体にプラスの相乗効果を与えることが期待される。

ライブコマースを実現するための番組配信・物販システムには、STARPが提供する「Live kit」を採用。STARPの渡邊裕馬CEOは「中国ではライブコマースの亜プリベンターが200を超えており、ユーザー数4億人、50億ドルの市場に育っている。トップクラスの配信者には、年収が1億円を超える人もいる」と話し、昨年ごろから日本でも流行の兆しがあると説明。

中国のEC市場は、当初はページビュー数を多く集める大手ショッピングモールサイトだけが強かったが、ファッション商材などで専門性の高いサイトが登場するようになり、現在ではカリスマ的なネットユーザーがオピニオンリーダーとなり、その人が使ったり薦めたりした商品が売れる「人格EC」の時代を迎えている、と渡邊CEOは指摘した。

国内でも、芸能人が話題の商品を紹介する「Rakuten Shopping Live TV」を楽天が配信しているほか、昨年7月にメルカリが「メルカリチャンネル」を開始し個人によるライブコマースに参入。ヤフーやKDDIなども、番組と物販の連動に取り組んでいる。視聴者と双方向のコミュニケーションが発生する中で商品が売れていき、従来のECサイトではわからない実際の使用感などを生の声で伝えることができることから、ECの新形態として注目を集めている。(BCN・日高 彰)