家電量販店の実売データ集計した「BCNランキング」によると、2013年11月末時点でまでに、日本で一番多く売れたスマートフォンは、まだ「iPhone 5」だ。しかし、9月20日発売の「iPhone 5s」は、その「iPhone 5」をやや上回るペースで売れている。同時に発売した「iPhone 5c」と「iPhone 5s」を合算すると、販売台数は「iPhone 5」を大きく上回り、新iPhoneは、日本国内に限ると、いまのところ過去最高の売れ行きといっていいだろう。

「iPhone 5s」は、発売以来、予約しなければ購入できない品薄状態が続いていたが、11月28日には各キャリアが「即日お持ち帰り可能」とアナウンスした。店舗に在庫がない場合でも、予約から7日間程度で渡せるという。また、11月22日には、Apple Online Storeで突如としてSIMフリー版の販売が始まり、「iPhone 5s/5c」は、3キャリア+SIMフリーの四つの選択肢から選ぶことができるようになった。今回は、2013年9月・10月・11月の3か月間の月間携帯電話ランキングを紹介しながら、販売データからドコモの「iPhone参入」が与えた影響を探った。

●2013年9月は「iPhone 5s」と前機種「iPhone 5」が拮抗していた

「BCNランキング」では、携帯電話、PHS、データ端末・データカードは、カラーバリエーションを合算したうえで、キャリア・容量ごとに別機種としてカウントしているが、今回は原則としてキャリアごとに合算して集計した。また、キャリア別シェアについては、ごく少数の「SIMフリー」は除外した。

2013年9月の携帯電話の販売台数1位は、auの「iPhone 5」だった。以下、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5」「iPhone 5s」、auの「iPhone 5s」、ドコモの「iPhone 5s」と続く。キャリアを合算した製品ブランド別では、「iPhone 5s」が24.2%、「iPhone 5」が21.1%、「iPhone 5c」が6.2%を占め、携帯電話の月間販売台数に占めるiPhoneのシェアは51.6%に達した。

旧機種も含めたiPhone全体の販売台数は、前年同月比172.7%と、前年を大きく上回った。iPhoneの好調を受けて、スマートフォンの販売台数も前年同月比107.0%と、6月以来3か月ぶりにプラスに転じたが、キャリア別にみると、ドコモは前年同月比75.2%にとどまり、7・8月同様、前年割れだった。憶測に過ぎないが、「一人負け」のイメージの払拭と前年割れ回避のために、ドコモはiPhoneに頼るしかなかったのだろう。しかし、正式発表前の買い控えや新色「ゴールド」を中心とした「iPhone 5s」の品薄、メールサービスの対応の遅れなどのために、ドコモのiPhone導入効果は10月に集中した。

●10月・11月は「iPhone 5s」がダントツ iPhone全体のシェアは6割超に

10月の携帯電話の販売台数1位は、ドコモの「iPhone 5s」が獲得。以下、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」、auの「iPhone 5s」「iPhone 5」、ソフトバンクモバイルの「iPhone 5c」と続く。iPhone以外では、auの携帯電話「GRATINA」が7位、ドコモのAndroid搭載スマートフォン「Xperia Z1 SO-01F」が9位に入った。

「iPhone 5s」に限ったキャリア別販売台数シェアは、ドコモが43.6%、ソフトバンクモバイルが35.0%、auが21.5%。10月の数字だけをみると、ドコモのiPhoneは非常に好調のようにみえる。しかし、発売から少したつと、廉価版である「iPhone 5c」の売れ行きが他のキャリアに比べて低迷し、MNP(他社からの乗り換え)獲得競争での弱さが露呈した。「iPhone 5s」と「iPhone 5c」を合わせると、期待を上回るような結果ではない。

11月の携帯電話の販売台数1位は、前月2位だったソフトバンクモバイルの「iPhone 5s」が獲得。2位にドコモの「iPhone 5s」、auの「iPhone 5s」が入り、10月に引き続き、3キャリアの「iPhone 5s」がトップ3を独占した。4位・5位にはソフトバンクモバイルとauの「iPhone 5c」が続き、6位に「Xperia Z1 SO-01F」が食い込んだ。

キャリアを合算した製品ブランド別では、10月は「iPhone 5s」が35.3%、「iPhone 5c」が11.5%、「iPhone 5」が11.0%、11月は「iPhone 5s」が39.0%、「iPhone 5c」が12.4%、「iPhone 5」が3.8%を占め、10月の時点では、廉価版として「iPhone 5」が人気を集めていた。旧機種を含むiPhone全体の販売台数は、10月が最も多い。iPhoneの販売台数シェアは、10月が57.9%、11月は55.3%。スマートフォンに限ると、シェアはそれぞれ69.4%、65.5%に上昇し、ピークの10月は約7割と、圧倒的な強さだった。

キャリアごとに、携帯電話全体の販売台数に占めるiPhoneの割合(iPhone率)を集計すると、auは50%台前半~後半、ソフトバンクモバイルは70%台前半~後半で推移し、ほとんど変化はなかった。対してドコモは、9月の26.5%から10月は約2倍の48.4%に跳ね上がったものの、11月には38.7%に下がった。今後は、auよりやや低い3割程度に落ち着くと予想する。

●シェア33%の攻防 ドコモの「iPhone参入」はキャリアの勢力図を変える?

「BCNランキング」によると、今年9~11月の3か月間に新規に購入されたスマートフォンのうち、実に65.8%がiPhoneだった。また、同じ期間のスマートフォンに限ったキャリア別販売台数シェアは、ドコモ33.7%、au33.6%、ソフトバンクモバイル31.0%と、ほぼ同率で並んだ。シェア33%の攻防、まさに三つ巴の戦いだ。ただし、主力の「iPhone」または「iPhone以外のスマートフォン」の販売台数が減ると、真っ先に競争から脱落することになる。iPhone率の高いキャリアほど不利といえるだろう。ドコモの「iPhone参入」が引き起こした変化としては、最大7割近くまで上昇したiPhoneのシェアと「3社横並び」の二点を挙げたい。(BCN・嵯峨野 芙美)

*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計している実売データベースで、日本の店頭市場の約4割をカバーしています。