「銀巴里から生まれたうた」をテーマに、金子由香利のシャンソン『時は過ぎてゆく』と美輪明宏のオリジナル曲『ヨイトマケの唄』をカバーした楽曲を7月12日にリリースしたシャンソン歌手のクミコ。

クミコ チケット情報

「銀巴里」とは、美輪明宏、金子由香利、戸川昌子などを輩出した伝説のシャンソン喫茶で、クミコも出演者の一人だった。1982年6月、銀巴里のオーディションに合格し、プロデビュー。当時、27歳だった。だが、オーディションでもオリジナル曲を披露したように、もともと“シャンソン畑”ではなかったクミコは、銀巴里のステージに立つも「いつでも逃げ出したいと思い続けていた」と明かす。

「銀巴里に入ってからもシャンソン的なヒエラルキーに馴染めなくて。掟やぶりみたいな歌もたくさん歌って。自分の事を“シャンソン歌手”と言う時、絶対に“なんちゃって”がつくんです。“なんちゃってシャンソン歌手”。今もずっと思い続けています」。

そんな思いを抱きながらも、今年、金子由香利、美輪明宏というシャンソン歌手の代表的存在のふたりのカバーをすることとなった。「金子さんの歌とか、ましてや美輪さんの『ヨイトマケの唄』を歌う日が来るとは本当に思ってなかった」とクミコ。だが、一大決心したのは、シャンソンこそが年齢を重ねても唯一、現在進行形で歌える歌だと実感したからだという。

「シャンソンは80歳を過ぎても歌われている方がたくさんいて、皆さん誇りを持って、色香を失わず歌っていらっしゃる方ばかりで。他のジャンルでは、そういう方ってなかなか少ないですよね。年を重ねるとリズム感も落ちたり、負になることがたくさんある中で、負にならないジャンルはシャンソン系しかないなと思ったんです」。

シャンソンは時間を武器にできる歌。「自分自身、再来年に古希を迎えるにあたっても、真剣にシャンソンに向かい合って、先輩方の思いを継いでいく者としてもやっていかなければいけないなと思いました」。決意と覚悟を新たにクミコはステージに立ち続ける。

10月7日(土)には、リニューアルした神戸朝日ホールのオープニングシリーズでのコンサートを開く。「神戸朝日ホールのオープニングシリーズの一人に入れていただいて光栄です。神戸は本当に久しぶりです。私にシャンソン的なものを教えてくれた元夫がたまたま神戸の出身で。これもご縁の一つだと思いますので、神戸の方も、大阪の方も、京都の方も、よろしければぜひお越しください。クミコスタイルのシャンソンですけれども、皆さんの心を揺さぶれたらいいなと思っています」。

取材・文:岩本