さまざまな出来事のあった2011年。何かとモヤモヤした気持ちを抱えたまま年の瀬を迎えた方もおられることだろう。かくいう筆者はガ○ダム最新アニメの出来が……いや何でもありません。本年ラストとなる今回は、読んでいてほんわか心安らげる「いい人しか出てこない漫画」から3作品をチョイスしてお届けしたい。

【その1】毎日がわくわくの連続『よつばと!』(作:あずまきよひこ)

無邪気なお子様「よつば」と、優しくも厳しい保護者「とーちゃん」の2人家族を中心に描かれる日常系ほんわかコメディ。とある街にこの2人が引っ越してきたところから物語が始まる。基本的に一話完結形式で、各話サブタイトルは「よつばと○○」。よつばがお隣さんの家へ遊びに行ったり、自転車でお出かけするだけといったシンプルなエピソードで構成されている。……が、手抜きだなんてとんでもない! 数々の漫画賞で上位に食い込み、ミリオンセラーどころか累計900万部(最新11巻まで)を叩き出す話題品はクオリティが半端じゃない。

最小限のキャラクターと会話で日常シーンを楽しく見せる工夫が随所にちりばめられ、小さなエピソードにまで作者の目が行き届いている。10回読めば、10以上の新しい発見があると言ってもウソではない。服のデザインからコマ端の小物、カップラーメンのフタに描かれた文字まで妥協しないこだわりは素晴らしい。

過度のお色気シーンや暴力描写に一切頼ることなく、キャラ同士のかけひきとシチュエーションで笑わせようという姿勢も共感でき、何よりこれで最高におもしろい。子供から大人、そして漫画を読まない人から生粋のオタクまで万人にお勧めできる、まさに最高クオリティの日常系コミック。読めば知らない間にニンマリしてしまうこと請け合いだ。

【その2】お金はなくとも笑顔がある『貧乏姉妹物語』(作:かずといずみ)

母親を病気で亡くし、父親にも蒸発された中学生と小学生の姉妹が支え合いながら生きていく物語。あえてジャンル名を付けるなら「清貧ハートフルコメディ」といったところだろうか。

設定だけ見ると悲壮感が漂って貧困に苦しむ生活をイメージしてしまうが、実際の展開はそんなことない。むしろ家賃2万6000円、フロなし1Kの木造アパート(築40年)で暮らす姉妹の貧しいながらも楽しい日々が描かれている。姉が新聞配達などアルバイトで家計を支え、家事担当の妹が給料日に月一回の楽しみ「からあげ」を用意する……あとは2人の笑顔が食卓に揃えば、立派なご馳走になるのだ。ボロアパートの窓から桜を楽しんだり、溜めたお金で夏祭りに行ったり、それだけでこの仲良し姉妹からは幸福のオーラがあふれてくる。

無口な大家さんがさりげなく2人をサポートしてくれたり、脇役キャラもみんないい人ばかり。読んでいるうちに“幸せ”“豊かさ”といった言葉の意味をしんみり問い直させてくれたりもする。2006年にTVアニメ化されDVDも出ているが、作者の美麗なカラーイラストを楽しみたいなら全4巻と手頃なボリュームの原作コミックスを強くお勧めしたい。