オスカー最有力候補のひとつとされるスティーブ・マックイーン監督の『それでも夜は明ける』のイタリア版ポスターが論議をかもしだしている。自由の身であったにも関わらず拉致され、奴隷として売られた黒人男性の実話にもとづくこの映画のアメリカ版ポスターは、主演のチウェテル・エジョフォーひとりだけが映し出されている。だが、イタリア版のポスターには、ブラッド・ピットの顔が大きく出ているほか、ピットの名前もはっきりと書かれており、エジョフォーの写真は、隅に小さく出ているだけだ。

ピットはこの作品のプロデューサーで、小さな役で出演もするが、このポスターを見た人は、ピットが主演の映画と誤解するかもしれない。ほかに、イタリアでは、助演のマイケル・ファスベンダーを中心にしたバージョンも作られている。この事実を知った北米配給のライオンズゲートは、「イタリアで出回っているブラッド・ピットとマイケル・ファスベンダーのポスターは、プロデューサーやライセンス会社の承認を受けずに製作されたものです。ただちに取り下げることを要求します」と声明を発表した。イタリアの配給会社は要請を受け入れ、ポスターの回収作業を始めている。

『それでも夜は明ける』
2014年3月7日(金)公開

文:猿渡由紀