歌舞伎座でのプレミアの模様

山田洋次監督の最新作『小さいおうち』が26日、東京・銀座の歌舞伎座でプレミア上映された。今年4月の改装開場以来、映画の上映が行われるのは初めて。正面玄関に敷かれたレッドカーペットには、山田監督をはじめ、主演の松たか子、黒木華、吉岡秀隆、橋爪功、吉行和子、室井滋、中嶋朋子、ラサール石井、秋山聡、市川福太郎、夏川結衣、小林稔侍、倍賞千恵子という豪華キャストが勢ぞろいし、道行く人たちの大きな歓声を浴びた。

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本作が82作目となる山田監督は「晴れがましいと同時に、面食らっています。僕の作品が選ばれたのは光栄だが、歌舞伎座にふさわしく、期待を裏切らない作品であることを祈るのみ」と普段とは異なる“舞台”あいさつに、いささか緊張した面持ちだった。

中島京子氏の直木賞受賞小説を原作に、昭和初期、東京郊外に建つ赤い三角屋根の“小さいおうち”に暮らす若奥様・時子(松)の秘められた恋愛模様が、女中のタキ(黒木)の視点から描かれる本作。やがて、一冊のノートに記された秘密は、平成を生きる若者・健史(妻夫木)によってひも解かれる。

夫以外の男性に恋い焦がれるという役どころについて、松は「共感を呼ぶのか微妙ですが、こんな人もいたのかなと、しばし思いを馳せてもらえれば」。一方、平成を生きるタキを演じた倍賞は「SKD(松竹歌劇団)時代に、よくここに勉強に来た」としみじみ述懐。また、山田監督作で主演した『下町の太陽』(1963)のヒット御礼を歌舞伎座で行った思い出も明かした。

最後に山田監督は「昭和の物語を、平成が包み込んだ構造の映画。こんな時代があったんだと感じながら、当時が現代につながっていると気づいてもらいたい。大きな歴史のうねりの中で、日本人が、そして人類が幸せな方向に向かっているのか疑問を抱いてもらうきっかけになれば」と歴史ある歌舞伎座でのあいさつを締めくくった。

『小さいおうち』
2014年1月25日全国公開

取材・文・写真:内田 涼