【90年代】やりすぎ注意!『鉄鍋のジャン』(作:西条真二 監修:おやまけいこ)

中華料理界に突然現われた16歳の料理人・醤(ジャン)。かつて中華の覇王と呼ばれた料理人の血を引くジャンは、若くしてスゴ腕の中華料理人だった。だが性格は「料理は勝負!」と言い切って他人を下にみる超傲慢なもの。そんな彼があちこちから反感を買いながらも、全力全開で料理勝負ロードを突っ走る話だ。週刊少年チャンピオンでの連載スタートは1995年。2006年からは第二部も連載された(すでに完結)。他作にくらべ、この作品の特徴はとにかく何もかもが“過剰”なところである。

まず細めな体格が多いのに男性キャラは例外なく筋肉質、女性キャラは巨乳に描かれている。料理人やめて格闘家になれよ!料理人やめてグラビアアイドルやれよ!と当時の読者たちは誌面にツッコミを入れたものだ。

そして見た目以上にブッ飛んでいるのが主人公・ジャンをはじめとした料理人たちの個性的な言動……いや、もはや奇行と呼ぶべきか。それぞれが「料理は○○」という独自の信念を掲げ、脇目もふらず突っ走る姿は見ていて清々しいほど。ひどいキャラになると料理中に「クケケケー!」「キシャシャシャー!」と奇声を発したり、水槽内の巨大ザメを素手で倒して食材にするなど、もはや意識していないと何の漫画を読んでいるのか時々わからなくなってしまう。

とはいえ監修役がいるだけあって中華料理に関する情報は詳しく、西条氏のハイレベルな画力が興味と食欲をそそる料理&試食シーンに仕上げている。料理バカはいろいろな漫画に登場するが、放送コードすれすれの奇人たちが暴れ回るのはこの作品くらいだろう。良い意味で非常に少年チャンピオンらしい料理漫画であり、読んでみて損はしないはずだ。
以上、連載時期の重複しないユニークな料理勝負コミックを紹介してみた。

2000年を過ぎてからは『華麗なる食卓(カレー)』『ラーメン発見伝(ラーメン)』といったメニュー特化型の勝負漫画が台頭してきたが、ちょっと昔のフリーダムな作品を読み直してみるのも意外に楽しいものである。

パソコン誌の編集者を経てフリーランス。執筆範囲はエンタメから法律、IT、教育、裏社会、ソシャゲまで硬軟いろいろ。最近の関心はダイエット、アンチエイジング。ねこだいすき。

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