宝塚歌劇星組公演『眠らない男・ナポレオンー愛と栄光の涯(はて)にー』 撮影:三上富之

2014年、創立100周年を迎えた宝塚歌劇。その幕開けを飾る星組公演『眠らない男・ナポレオン―愛と栄光の涯(はて)に―』が、1月1日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕した。

宝塚歌劇星組『眠らない男・ナポレオンー愛と栄光の涯(はて)にー』のチケット情報

「宝塚から世界へ発信するオリジナル作品」を目指した本作は、作曲にフランスより『ロミオとジュリエット』のジェラール・プレスギュルヴィックを招き、脚本・演出の小池修一郎との日仏コラボレーションで手掛けられた超大作ミュージカル。フランスの英雄、ナポレオン・ボナパルトの輝かしい人生の軌跡を、妻・ジョセフィーヌとの愛と葛藤を中心に描いた物語だ。

コルシカ島の貧しい田舎貴族の家に生まれたナポレオン。フランスの士官学校に入学した彼は、飛び抜けた才能を発揮し、飛び級で士官学校を卒業。砲兵隊に入隊した後、フランス革命によって“身分制社会”が崩壊。ナポレオンは総司令官バラスから、王党派の反乱鎮圧の指揮権をゆだねられ、その期待に応えた。同じ頃、パリ社交界の華であり、ふたりの子どもを持つ未亡人ジョセフィーヌと出会ったナポレオン。その魅力に虜となって結婚したものの、ふたりの心はすれ違い…。

1幕だけでも30曲以上もあるという本作。ジェラールの楽曲はポップでキャッチーなものから、美しく壮大なものまで実に多彩。いつまでも耳に残る音楽で綴りながら、“眠らない男”の、愛と戦いの濃密なエピソードの数々をテンポよく滑らかに展開していく。

ナポレオンを演じる男役トップスター・柚希礼音(ゆずき・れおん)は、高みを目指して真っ直ぐに突き進んでいく男を、時にわがままに、生き生きと演じていく。しかし、頂点に立ったナポレオンは、モスクワ遠征での敗北をきっかけに失脚。虚しさにあふれたその様が印象的で、理想を求めて生きた男の最後には、グッと胸が締めつけられる。ナポレオンの運命を左右するジョセフィーヌを演じるのは夢咲(ゆめさき)ねね。ナポレオンの愛を拒み、女王になるべくしたたかに生きていた頃から、自分の本当の想いに気付き、死ぬまでナポレオンへの愛を貫く心の変化を丁寧に表現している。

また、ナポレオンを描いた絵画に、大きな鷲を表した壮大な舞台美術、戴冠式で着用する豪華な衣装と、見た目にも楽しい。フィナーレのラスト、パレードでも柚希は煌びやかな金色の羽根を着けて華やかに締めくくる。100周年の幕開きにふさわしい、スケールの大きなステージだ。

兵庫公演は2月3日(月)まで上演中。

取材・文:黒石悦子