地球ゴージャスプロデュース公演『クザリアーナの翼』 地球ゴージャスプロデュース公演『クザリアーナの翼』

岸谷五朗と寺脇康文が主宰する演劇ユニット「地球ゴージャス」の新作舞台『クザリアーナの翼』が1月8日、赤坂ACTシアターにて開幕した。前日の会見では主要キャストのひとり、風間俊介が「傑作が出来上がりました!」と朗らかに宣言し、岸谷も「地球ゴージャスらしいエンターテインメント作品に仕上がりました」と自信のほどを見せて意気揚々。その言葉通り、ユニット結成20周年の新春にお目見えしたのは、大地を踏みしめる人々の生のエネルギーが炸裂した、力強く清々しいステージだ。

地球ゴージャスプロデュース公演『クザリアーナの翼』チケット情報

物語の舞台となるのは階級制度が敷かれた架空の国ジャメーリア。最上の階級で絶対権力を持つ大帝クエーサー(中村雅俊)のもと、2番目の階級の軍国民であるスワン元帥(湖月わたる)やギゼル大佐(山本裕典)らが民衆を厳しく統制していた。最下級の民であるガンクツ(風間)とグース(湖月・二役)の兄妹、コルリ(宮澤佐江)、イグレット(佐藤江梨子)、キジー(寺脇)、ウグイ(岸谷)らは将来の夢を見ることはおろか、上級の人間と言葉を交わすことも許されない。ある日、イグレットが軍国民に連れ去られる事件が勃発。ガンクツらは権力に抗う決意をし、人間らしい生き方を取り戻そうと立ち上がる。

整然と行進する無表情で冷徹な軍人たちや、虐げられて地を転げ回る最下級の人々など、総勢40人もの出演者が不穏な幕開けを展開。その中で岸谷と寺脇が笑いを先導し、胸騒ぎの中にホッと力の抜ける和やかさを作り出す。シリアスとコメディ、そのバランスの妙に岸谷の言う“地球ゴージャスらしさ”が覗く。二役を演じた湖月は大奮闘。「宝塚ばりの早変わりで驚かせたい」と自身が語ったように、ロングコート姿のスワン元帥の凛々しさと気弱なグースのあどけなさとのギャップが魅惑的だ。宮澤の初舞台らしからぬ伸びやかな演技、コミカルと妖艶さを併せ持つ佐藤の不思議な雰囲気にも惹きつけられる。山本は哀しい陰を背負った悪役に果敢に挑戦し、新たな表情を獲得。穏やかな立ち姿に貫禄が滲む中村は、権力者の威厳だけでなく、おどけた仕種でも客席を沸かせていた。そして風間は文字通りの熱演で観客を吸引。ガンクツとして迷いなく立ち、全身から汗を飛び散らせて駆ける姿に胸を打たれる。ストーリーを軽快に運ぶ歌とダンス、華やかな照明効果や壮大な美術など、地球ゴージャスが築くお馴染みのワンダーランドは期待通りに元気をくれる。それに加えて今回香り立つのは “生き抜く強さ”の潔いエッセンスだ。

公演は2月20日(木)まで東京・赤坂ACTシアター、2月26日(水)から愛知県芸術劇場 大ホール、3月7日(金)から福岡・キャナルシティ劇場、3月18日(火)から大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。福岡公演の一般発売は2014年1月11日(土)午前10時より。その他の公演チケットは発売中。

取材・文:上野紀子