『ゼロ・グラビティ』撮影中の模様 (C)2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.

日本でも大ヒット公開中の『ゼロ・グラビティ』のメイキング映像が公開された。映画関係者でさえ「どうやって撮影したのかわからない」と語るほど驚異的な撮影が行われたスタジオにカメラが潜入している。

『ゼロ・グラビティ』メイキング映像

本作は地上から600キロメートル上空で突発的な事故に遭遇し、無重力(ゼロ・グラビティ)空間に放り出されたメディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)が地球との交信手段も絶たれ、酸素残量が2時間になってしまった状態から生還を試みる姿を描く。

まるで本当に宇宙で撮影したよう。本作を観た多くの観客はそう思ったのではないだろうか? 人間が逆境にどのように立ち向かい、生きていこうとするかを描きたかったアルフォンソ・キュアロン監督は技術的な制約や撮影方法を一切考えずに、“ドラマ重視”で脚本を執筆し、その後に新たな撮影方法を生み出すための試行錯誤を繰り返した。監督は「映画のテーマを最初から言葉ではなく、視覚的隠喩で描きたかった」と振り返る。

このほど公開されたメイキング映像は、監督とスタッフが試行錯誤を繰り返してたどり着いた“まだ誰も試みていない撮影方法”の一端が紹介されている。ブロックらキャストは無重力を表現するためにワイヤーで吊るされ、縦横無尽に動き回るカメラは特殊な装置に取り付けられている。劇中では本物にしか見えなかった宇宙服は白を基調にしたシンプルなもので撮影後に表面や浮遊するワイヤー、チューブ、計器類がデジタルで追加されたことがわかる。

さらに注目は映像に登場する“ライトボックス”だ。これは360度がLEDライトに囲まれた箱のような装置で、この中に俳優が入ることで、どの角度からも照明をあてることができる。本作の撮影を担当したのは名手エマニュエル・ルベッキで、これまでテレンス・マリック監督とタッグを組んで“自然光で撮影する”ノウハウを積み上げてきた。本作でルベッキはそこで得た知識を活かして“自然光を人工的に作り出す”作業に挑んだ。ちなみに劇中ではレンズに強い光が入ってきたときに発生するフレアやカメラが何かに衝突したときの揺れ、対象物が急速に移動した際のピントのズレなどが登場するが、これらもすべて“意図的”に作り出されたものだ。

本作を観た観客は、劇中の映像が圧倒的に“自然”に見えることに驚いたはずだが、本映像を観るとそれらがキュアロン監督やスタッフたちの実験と執念と知恵の結晶だったとわかるはずだ。

『ゼロ・グラビティ』
公開中

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