産後には、思ってもみない「落とし穴」があります。産後うつや産後クライシスがそれにあたるわけですが、まさか自分が、という人も多いのではないでしょうか。

特に産後クライシスは、早めに対処しないと、離婚の危機にも直結する問題です。

産後の夫婦のミゾはいつから生まれるのでしょうか。深くなる前に、対策は産後すぐから立てるのが理想ですが、なかなか実際には、何をどうすればいいのか、難しいものですよね。

それが実現できる、産後のパパママのための施設が埼玉県川越市にあります。

その名も「パタニティ・マタニティハウス」。愛和病院を経営する愛和グループが、病院に隣接する土地に昨年2月にオープンした産後ケア施設です。

高い年間分娩数や、産前産後のママへのケアが充実していることでも知られる同院。施設名の頭にママでなく、パパを持ってくるところに、こだわりがありそうです。

いったいどんな場所で、どんな支援を行っているのか、実際にパタニティ・マタニティハウスにお邪魔してきました。

パタニティ・マタニティハウスの全容とは?

パタニティ・マタニティハウス(以下PMハウス)では、「セカンドハネムーン」と銘打って、出産後、可能である限り、退院したその足で2泊3日の宿泊型子育て支援を提供しています。

利用できる条件は、初産であることと、愛和病院での出産者であること。

セカンドハネムーンを終えた後は、子どもが1歳になるまでの1年間、365日空いているサロンスペースで1日最大4時間を過ごすことができます。

木の香りの満ちた広ーいフロアには、赤ちゃんを抱いたり、遊ばせたりするママやパパが点在しています。

毎日定時に焼きあがるパンと飲み物は利用料金に含まれており、テーブルを囲んで談笑する姿も。

産後3ヶ月までなら、保育士であるスタッフに赤ちゃんを預けて、最大1時間半お昼寝できたり、ひとりの時間を過ごせたりする部屋まである、夢のようなサロンです。

サロンのみの使用料金は年間5万円ですが、大人気で、現在募集はしていないそうです。

PMハウスには、夫婦と赤ちゃんの絆を深めるために、おじいちゃんやおばあちゃんは入室できない決まりがあります。

これはなるほどと思いました。

初めての子育てでは、つい経験者である自分の母親に頼ってしまうママも多いものですが、それによって、パパが蚊帳の外に置かれる場合も少なくありませんよね。

パパが授乳以外はすべて学べる場所

セカンドハネムーンでステイできるお部屋は5室。

生まれたての赤ちゃんと過ごす目的に特化したお部屋には、赤ちゃんのおむつはもちろん、パパとママのルームウェアまで用意されています。

ベッドタイプか布団タイプかを選べるようになっているので、自宅の寝室に合わせて選ぶ方が多いそうです。

ほぼ完ぺきなホテルのような空間で、パパはなにをするのでしょうか。

イクメンブートキャンプのようなスパルタ式かと思いきや、あくまで希望に沿って、子育てのあれこれをスタッフが実践で教えてくれます。

学べることはいくらでもあります。たとえば、赤ちゃんの爪切り、沐浴、先輩パパの話を聞く、キッチンを使っての簡単な料理などなど、ほとんどのパパは学ぶ意欲旺盛なのだそう。

滞在期間中は24時間体制でスタッフが待機していますが、意外にも、あまり夜中にコールが鳴ることはないのだとか。

何かあっても自分たちでなんとかしよう、というカップルが多いということでした。

PMハウスのセカンドハネムーンの狙いはここにあるのですね。

頼れるのはお互いしかいない、という状態を作り出すことによって、夫婦が子育てにおける最良の同志に育っていくのでしょう。

愛和グループ社長の藤田博子さんいわく、「パパが変わる確実な手ごたえを感じています」ということでした。