ポン・ジュノが世界レベルでも貫いた制御不能の執念

2014.1.20 10:40配信
『スノーピアサー』(C)2013 SNOWPIERCER LTD.CO. ALL RIGHTS RESERVED

ポン・ジュノ監督作の主人公の共通点を挙げると、“執念”という単語に凝縮されるだろう。『殺人の追憶』の刑事も、『母なる証明』の息子の無実を信じる母も、もはや自分でも制御できない深度の執念に突き動かされ、日常に後戻りできない状態に陥っていく。各国のキャストを集め、ハリウッド大作の香りも濃厚なこの新作では、その執念が「列車の前方」という一目瞭然のベクトルとなり、映画としての突進力に融合した。

ジャンルは『TIME/タイム』や『トータル・リコール』、『エリジウム』と、ここ数年、ちょっとしたブームになっている格差社会SF。本作の場合、人間社会全体が一台の列車内に詰め込まれ、後方車両の最下層から革命が起こるので、ロールプレイングゲームをクリアする面白さも備わっている(このあたりは過去のジュノ作品に比べると、視覚的に分かりやすい)。前方に行くにつれ、次々と姿を現す信じがたい内装の車両。牛乳瓶の底のような眼鏡に、入れ歯のティルダ・スウィントンら悪役キャストも、いい意味で漫画的。しかし底辺には、虐げられた者たちの溜まりに溜まった怒りの感情が沸騰しており、要所での目を背けたくなるグロテスク描写も含め、各要素のカオスな感覚がゲーム的軽さを消し去っていく。観ているこちらの心を、激しくざわめかせ続けるのだ。

アメリカ公開用に某大物プロデューサーからカットを要求されても、拒否を貫いたというポン・ジュノ。予定調和を避け、想像力の翼を広げる彼らしい結末が、本作にSFアクションとして語り継がれる可能性を秘めさせた。地球の観点からすれば、列車内の攻防はとるに足らないもの。所詮、人間同士の争いなんて、ちっぽけで馬鹿らしいという痛切なテーマが、白く凍りついた大地にこだまする……。

『スノーピアサー』
2月7日(金) TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー

『ぴあ Movie Special 2014 Winter』(発売中)より
文:斉藤博昭

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