『オンリー・ゴッド』を手がけたニコラス・ウィンディング・レフン監督

『ドライヴ』のライアン・ゴズリングとニコラス・ウィンディング・レフン監督が再タッグを組んだ衝撃作『オンリー・ゴッド』がついに日本で公開される。監督は『ドライヴ』よりも前から準備を進め、「今まで作ってきたすべての映画の蓄積」と称する本作で何を描くのだろうか? 本人に話を聞いた。

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本作はタイの首都バンコクを舞台に、兄を殺された男ジュリアン(ゴズリング)と、自らを“神”と称してジュリアンの前に立ちはだかる男チャンの壮絶な戦いを描いた衝撃作で“神という存在に挑み続ける人間”がテーマになっている。レフン監督は「長い時間をかけて少しずつ物語が紡がれていき、撮影している段階でもさらに少しずつカタチが変化していったんです。編集をして音楽を入れている段階でもまだ考え続けていました」と振り返る。

そこで、キャストとスタッフは撮影している間はもちろん、完成の瞬間までレフン監督の思索と試行錯誤に付き合い、共に神という存在に挑み続けた。レフン監督は「大事なことは予算を安く抑えること。安く作れば自由が確保できるんです」と笑うが、主演を務めたゴズリングの存在が大きいようだ。「私と彼は“あうんの呼吸”で動けるし、何にでも果敢に挑戦してくれるし、『このことを聞いてほしかった!』という質問をしてくれる。まるで僕の分身のような存在です」。

劇中で主人公ジュリアンは、絶対的な存在である元警官チャンの存在に恐怖を覚えながら、逃げ出すことなく何度も立ち向かう。多くを語らず、出自もわからず、人間が決して手出しできない脅威でありながらモンスターではないチャンの存在は、レフン監督がずっと愛している日本の怪獣のようだ。「それは初めて言われたけど、とてもクールな解釈です! だとしたらあのチャンは“ゴジラ”だ! 『ONLY GODZILLA FORGIVES』ですね(笑)。チャンを描く際に考えたことは“純粋な悪”は存在しない、ということ。悪行の本当に恐ろしいところは、“悪を行う側にはそれなりの理論がある”ということだと思う。チャンはモンスターのような存在でありながら、社会的な意識があり、自分だけの論理があるんです」。

一方、神に対峙しようとする人間たちは“論理”を超えた想いや衝動で行動する。「神は全能だけど、人間は違う。彼らは“どうしてもそうせねばならない”と思って彼らと対峙するのでしょう。この映画ではスピリチュアルな世界と現実世界を同時に描こうとしました。われわれ人間は生まれてから死ぬまでに“あちらの世界”と“こちらの世界”をさまよい歩きながら死んでいくんだと思います」。

人間はなぜ、生きながら“あの世”を知りたいという欲望を持ってしまうのか? なぜ命をかけて神に挑もうとするのか? レフン監督が『オンリー・ゴッド』を通して続けた思索と試行錯誤の行方をスクリーンで見届けてほしい。

『オンリー・ゴッド』
1月25日(土) 新宿バルト9ほか全国公開