「どうする家康」(C)NHK

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「どうする家康」。江戸幕府を開いた徳川家康(松本潤)の生涯を描いた物語は、いよいよクライマックスを迎えつつある。多数の家臣たちに支えられながら天下統一への道を歩んできた家康だが、その中でも文武両面に優れ、“徳川四天王”の一人に数えられたのが、“小平太”こと榊原康政だ。演じる杉野遥亮は、一足早くクランクアップ。それから間もなく、大河ドラマ初出演となった1年半に及ぶ撮影を振り返ってくれた。

-長期の撮影、お疲れ様でした。クランクアップして1週間ほど経った今のお気持ちは?

 ほっとした気持ちが大きいです。クランクアップ直後の2日間くらいは、作品の世界観に引きずられている感じでしたけど、今は落ち着いてきました。この1年半、他の作品をやりながらも、ずっと頭の片隅に小平太のことがあったので、それが少し軽くなった気がします。

-最初の頃と現在で、小平太と向き合う意識は変わりましたか。

 全然違いますね。最初は史実にとらわれ過ぎて、「こう見せなきゃ」と思い込んでいる部分が大きかったんです。といっても、どういう人物なのか輪郭も見えないし、終着点もわからない中、緊張や不安もあって意識がやや散漫になってしまって。でも、ある時期から、今の自分とリンクさせながら作っていくのが、今回の僕の小平太だな、と考えが変わってきたんです。同時に、成長させつつ、年齢による変化も表現しなければいけないので、その辺は自分なりに考えて。ただ、大事なのは、どう見せるかよりも、内面から何が出てくるかだな、と。最終的には、丁寧に気持ちを作ることに集中してお芝居を楽しめれば、というふうに考えが変わっていきました。

-撮影を終えた今は、満足できた感じでしょうか。

 なかなか思い通りにいかず、正直、悔しい瞬間もいっぱいありました。でも、そういう気持ちを、「もしかしたら小平太にもそういう瞬間があったかも」と、お芝居とリンクさせていくようにしたんです。その結果、自分のお芝居に100%満足できたわけではありませんが、最終的に楽しく終われたので、その点に関しては満足しています。

-充実した撮影期間だったようですね。

 実はつい最近、ようやく榊原康政のお墓に行くことができたんです。普通は皆さん、撮影に入る前に行くものかもしれませんが、僕は最初、自信がなくて不安でいっぱいだったので、気軽にあいさつに行けないな、と思っていて。でも、終わったとき、「いい仕事ができた」という充実感と共に、「ありがとうございます。お世話になりました」という気持ちが湧いてきたので、ようやくお参りに行くことができました。

-長期の撮影を共にした主君・家康役の松本潤さんの印象は?

 松本さんとのお芝居が楽しく、自然と康政に入っていける感覚がありました。正直、僕自身がうまく集中できず、役に入っていきづらいときもあったんです。そんなときでも、松本さんの姿を見ると、やりやすくなることがあって。そういう意味では、すごく助けていただきました。

-康政と家康の関係を表現する上で心掛けたことは?

 小平太の内面の描写は少なかったんですけど、殿に対しては徐々に忠義を尽くしていく人だと思っていたので、その関係の変化がきちんと見えたらいいな、と。最初は「殿」というより、友だちや少し年上の先輩、みたいな感覚だったんです。でも、小牧・長久手の戦いあたりから、やり取りにヒリヒリするような緊張感が出てきて、ちゃんと「殿」だと思えて。当時の人が背負っていたものと同じものを、松本さんも背負っているようで、すごくリアルに「殿」に見えてきました。

-山田裕貴さん演じる本多忠勝(平八郎)とは、“平平コンビ”と話題になりましたね。

 小平太には、常に平八郎を意識した部分があったと思っています。だから、山田くんとはいろんなやり取りをしましたし、現場でお芝居が変わることもたびたびありました。ただ、僕が現場にいて楽しいと感じるのは、誰かと熱量が一致して、本気でものを作ることができる瞬間なんです。山田くんとはそういう経験ができたので、すごく楽しかったです。例えば第7回、一向宗の寺に潜入した2人が、ナンパしに行こうとするシーンも、ひとつひとつの“間”にこだわりましたし。まだ詳しいことは言えませんが、歳を取った2人の最後のやりとりも、山田くんと一緒に試行錯誤したので、すごく印象に残っています。

-ところで、元々は時代劇に対して苦手意識があったそうですが…。

 今は、やってよかったと思っています。元々、時代劇については、人情や人と人とのつながりを丁寧に描ける点に魅力を感じていたんです。でも、自分が演じることを考えてみると、所作が完璧でない状態でセリフを言うと、意識が散漫になってしまいそうで、苦手意識が拭えなくて。ただ、今回やってみたら、何となくですけど、自分の中で理解できたり、考え過ぎの部分に気付いたりしたので、やっているうちに徐々に「楽しい」と思えるようになってきました。

-そのほか、初めての大河ドラマの現場で、収穫になったことがあれば教えてください。

 数々の先輩や脚本家の古沢良太さん、スタッフの皆さんなど、いろんな方との出会いは、大きな収穫だったかもしれないですね。でも、そういうものは今この瞬間よりも、何年か経った後、それがつながって形になったときに見えたりするものなので、今の段階では「わからない」というのが正直な気持ちです。そういう結果が出せるように、これから頑張っていきたいです。

-最後に、いよいよ迫ってきた関ケ原の戦い(11月12日放送の第43回)の見どころを教えてください。

 家康と石田三成(中村七之助)の関係に決着がつく回ですが、どちらが正しく、どちらが間違っていると言い切れない部分があるので、そういう切なさも含め、きっと胸にくるものがあるのではないでしょうか。僕もオンエアを楽しみにしています。

(取材・文/井上健一)