発表からわずか約4か月の準備期間を経てオープンした「楽天ビック」。両者の狙いは?

ビックカメラと楽天の共同運営によるショッピングサイト「楽天ビック」が、4月11日にオープンした。昨年末の発表から約4か月という短期間でのサービス開始は性急な印象も受けるが、果たしてどのような狙いがあるのか。メディア向けの説明会で語られた戦略をもとに両社の思惑を読み解いた。

自社ECで開拓が不十分な女性客を獲得したいビックカメラ

ビックカメラはもともと楽天のプラットフォームで「ビックカメラ楽天市場店」を出店しており、楽天ビックはこの基盤を引き継ぐ形になる。従来は楽天市場内の一枠に過ぎなかったが、楽天ビックはECサイトとして独立している。本サイト運営のために設立したビックカメラ楽天の責任者はビックカメラのEC事業本部長である秋保徹 常務執行取締役が務める。新会社の人員数は非公表だが、双方に所属する社員がほぼ同等の比率で構成しているようだ。

今回の提携で無視できないのがビックカメラが運営する「ビックカメラ.com」だ。ビックカメラとしても自社ECは注力している分野であり、顧客を奪い合えば成長を阻害する要因にもなりかねない。

しかし、ビックカメラの宮嶋宏幸社長は「楽天市場店の時代からビックカメラ.comと顧客の棲み分けはできていた」と懸念を否定する。コメントの中で頻繁に出てきたのは「女性」というキーワード。楽天はECの中でも女性の支持が高い。ビックカメラとしてはそのブランドを色濃く反映することで、自社サイトでカバーできていないターゲットの新規獲得に期待する狙いがある。

オフライン店舗に対する目配せもしている。サービス開始から導入している「店舗在庫の確認」では、在庫だけでなく展示の有無も確認できる。これまでもコールセンターに「在庫はありるか、体験できるか」という問い合わせは多数あった。オンラインで確認することができれば、顧客・オペレータともに手間が減る。オフとオンの新しい連携として相乗効果に期待する。

独自性のある家電ECで他社と差異化を図りたい楽天

相手方のブランドが有効であるのは楽天にとっても同様だ。同社の調査によると、ユーザーの8割がECで家電を購入しようとして途中で断念した経験をもつという。理由として票を集めたのは「価格が高かった」「実際に見て購入したかった」「配送設置に不安があった」の3項目。後者の2項目はオンラインだがらこその弱点といえる。

「楽天ビック」は、購入後に設置・取付工事を依頼できるサービスの導入を検討しているが、同等のサービスはAmazonや大手家電量販店のECサイトであればすでに導入済み。即急に手を打つ必要があり、ノウハウのあるビックカメラと組んだようにもみえる。

逆に他社との差異化を図るのは、独自商品の展開だ。市場全体の嗜好を楽天の9500万人の顧客データから、家電に対する嗜好をビックカメラの3000万人のカード会員から読み取り、ニーズを捉えたアイテムを開発していく。

まずは手始めにフルHD解像度対応で手頃なVRヘッドマウントディスプレイを販売する予定。楽天の三木谷浩史会長は「一歩踏み込んだ提携を目指す」とコメントしたが、価格一辺倒になりがちなECで、独自性による新しい勝負に挑む。

両社それぞれの立場での戦略を踏まえると、双方とも重視しているのは目下の売上ではなく、より長期的な目線に立った次世代のO2O戦略だ。オープン当初のサービスが発表している構想のごく一部に過ぎないのも、楽天ビックを実証の場と捉えているからだろう。将来的には物流・配送での連携も視野に入れており、両社の間には現時点で提示されているより大きな設計図があるかもしれない。(BCN・大蔵 大輔)

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